2014/1/6

総合 –EUウオッチャー

銀行破綻処理の一元化で合意、当初の構想から大きく後退

この記事の要約

EU加盟国は12月18日に開いた財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する制度の枠組みについて合意し、20日に閉幕したEU首脳会議で承認を受けた。これによって銀行同盟創設の第2段階となる同制度の発足に向けて大き […]

EU加盟国は12月18日に開いた財務相理事会で、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する制度の枠組みについて合意し、20日に閉幕したEU首脳会議で承認を受けた。これによって銀行同盟創設の第2段階となる同制度の発足に向けて大きく前進したことになる。ただ、破綻処理に活用する統一基金が小規模で、完全に統一されるまで10年を要することや、処理決定のシステムが複雑化されるなど、当初の構想から大きく後退した内容で、金融・債務危機の再発防止策として十分に機能するか危ぶむ声が出ている。

\

「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる同制度は、銀行同盟の第1段階である大手銀行の監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度に参加するユーロ圏と、これに自主的に参加するEU内の非ユーロ参加国の銀行が対象。「破綻処理委員会」と「単一破綻処理基金」の創設が2本柱となっている。ECBの監督対象となる銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた場合に、ECBの通告を受けて破綻処理委員会が対応策を協議し、救済して再建するか閉鎖するかを決め、単一基金を使って処理を進めるという仕組みだ。

\

財務相理事会での合意によると、SRMは15年1月に発足の予定。破綻処理委員会は委員長、4人の常勤委員(任命制)からなる理事会と、SRMに参加する国の当局者で構成され、破綻処理策をまとめる。救済または清算に単一基金を活用する場合は、ます当該銀行の債権者に負担を迫る「ベイル・イン」と呼ばれるシステムを導入する。同システムは16年1月から適用する。

\

単一基金は、まず各国が国内銀行の拠出によって創設。2016年までの10年間で、各国ベースの基金を段階的に統合し、最終的に総額550億ユーロの統一基金とする。この移行期間中に破綻処理の必要が生じ、対象国の基金が不足した際は、同国による当該銀行への公的資金注入のほか、他の国の基金から融通を受けることや、EUの金融安全網である「欧州安定メカニズム(ESM)」の資金を投入することが認められる。ESMを活用する場合は、スペイン、キプロスの銀行救済時のような銀行再編など厳しい条件の履行が求められる。

\