2013/12/16

総合 –EUウオッチャー

ウクライナがEU・露相手に天びん外交、連合協定調印の見返りに支援要求

この記事の要約

ウクライナではロシアからの強い圧力を受けてEUとの「連合協定」への正式調印を見送った11月末以来、首都キエフを中心に、EUへの接近を求める野党勢力や一般市民による大規模な反政府デモが続いている。こうしたなかヤヌコビッチ政 […]

ウクライナではロシアからの強い圧力を受けてEUとの「連合協定」への正式調印を見送った11月末以来、首都キエフを中心に、EUへの接近を求める野党勢力や一般市民による大規模な反政府デモが続いている。こうしたなかヤヌコビッチ政権は低迷する経済の立て直しを図るため、EUとロシアの双方に対し、経済支援を引き出すための駆け引きを展開している。

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ウクライナのアルブゾフ第1副首相は12日、ブリュッセルで欧州委員会のフューレ委員(拡大・欧州近隣政策担当)と会談。連合協定の締結に向けた道筋について協議したことを明らかにし、ウクライナは「国家の戦略的利益のため、近くEUとの協定に調印する」と発言した。一方、フューレ委員は「ウクライナが自国民だけでなく、海外の投資家や債権者からの信頼を回復する手助けをする必要がある」と述べ、同国が連合協定に調印すればEUからの支援は「どんどん大きくなる」と強調。EUはウクライナ向けに6億1,000万ユーロの支援策を用意しているが、協定への調印と引き換えにさらに支援を拡大するほか、国際通貨基金(IMF)の融資再開に向けた交渉などで協力する方針を示した。

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これに先立ち、ウクライナのアザロフ首相は11日の閣議で、連合協定に調停する見返りとして、EU側に200億ユーロの支援を求める方針を表明した。同首相はEUからの支援によってロシアとの関係悪化に伴う損失を補てんすることができると指摘し、EUに対してウクライナ経済の現状について理解を求め、「ウクライナとEUの双方に利益をもたらすプロジェクト」への投資を促す考えを示した。

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一方、ロシアのプーチン大統領は12日に行った年次教書演説で、ウクライナに対してロシアが主導する関税同盟への参加を呼びかけた。同大統領は緊張が高まっているウクライナの政治情勢に言及し、話し合いによる事態の打開に期待すると発言。そのうえで、「ユーラシアの統合」を実現することがウクライナを含めた近隣諸国の利益につながるとの考えを示し、「われわれが目指す統合プロジェクトは平等の権利と純粋な経済的利益に基づくものだ」と強調した。

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ロシア政府関係者によると、ヤヌコビッチ大統領は17日にモスクワでプーチン大統領らと会談する予定になっており、そこでウクライナへの経済支援に関する合意文書に署名するとの見方が出ている。ウシャコフ大統領顧問(外交政策担当)は12日、17日の会議に向けて一連の文書の作成を進めていることを認めたが、ウクライナが求めている天然ガス価格の引き下げに応じるかどうかなど、具体的な内容については言及を避けた。

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