欧州議会は10日、大西洋北東海域での深海漁業の規制を強化する法案を反対342、賛成326の僅差で否決した。脆弱な深海の生態系を保護するため、底引き網と刺し網の全面禁止を求める同提案には、スペインやフランスなどの漁業国が反対していた。
\深海魚は繁殖力が弱く、成長も遅いことから、混獲などの影響を受けやすい。大西洋北東部の水揚げ量のうち深海魚が占める割合は全体の約1%だが、資源の枯渇が進み漁獲量は年々減少している。このため欧州委員会は昨年7月、底引き網と刺し網の使用を段階的に禁止することや、深海漁業の操業許可に関する認定基準を厳格化することを提案していた。
\欧州議会は今回、底引き網と刺し網の段階的禁止に代わり、欧州委が加盟国から提供された情報に基づいて脆弱性が高く保護が必要なエリアを設定し、これらのエリアでの漁業を全面的に禁止することを提案。また、深海漁業に使用される特殊な漁具(特に底引き網と刺し網)が深海の生態系に与える影響について欧州委が4年後に評価を実施し、保護が十分でないと判断した場合に関連漁具の使用の全面禁止を提案できる制度の導入や、底引き網と刺し網を使って深海漁業を行っている業者が、より生態系へのダメージが少ない漁具に切り替える場合に、欧州海洋漁業基金(EMFF)から補助金を交付することなどを提案した。これらの提案は今後、閣僚理事会で審議される。
\(中間タイトル)モロッコとの漁業協定は承認
\一方、欧州議会は同日、EUとモロッコの新たな漁業協定を承認した。モロッコがEUの漁船に同国水域での漁業操業権を与える見返りに、EUが年4,000万ユーロを支払うという内容。新協定の期間は4年で、スペインなどEU11カ国の126隻の漁船がモロッコ水域で操業できるようになる。
\EUはモロッコと2007年に締結した漁業協定に基づき、モロッコ水域での漁業操業権を得ていたが、欧州議会は、同協定が経済性や資源保護の観点から問題が多いうえ、紛争地域である西サハラ住民の利益が考慮されていないとして、2011年12月に延長を拒否。協定は失効した。新協定には、モロッコの漁民の利益を重視し、EU予算から支払われる3,000万ユーロのうち1,400万ユーロを同国の漁業支援に充てることが盛り込まれた。しかし、西サハラの問題については、同地域の沖合の水産資源が豊富で、EUの漁船による漁獲が集中することから、旧協定から変更したかった。このため、欧州議会が新協定を承認するかが注目されていた。
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