2013/12/16

環境・通信・その他

欧州議会、排出枠入札の一部延期を承認

この記事の要約

欧州議会は10日の本会議で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想を賛成多数で承認した。排出枠の需給バランスを改善して排出権価格 […]

欧州議会は10日の本会議で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の第3期間(2013-20年)に有償配分する排出枠の入札を一部延期する「バックローディング」構想を賛成多数で承認した。排出枠の需給バランスを改善して排出権価格を下支えするための措置で、欧州委員会は最大9億トン分の入札時期を延期することができる。今月16~17日に予定されるEU閣僚理事会の正式な承認を経て、欧州議会と加盟国の間で具体的な実施方法に関する協議に入る。

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EU-ETSでは第3期間がスタートした今年から段階的にオークションによる排出枠の有償割当を拡大し、27年までに全面移行することが決まっている。しかし、ユーロ圏の債務危機による景気低迷で企業の生産活動が停滞し、排出枠に膨大な余剰が生じた結果、排出権価格は今年4月に1トン当たり2.46ユーロの最安値を記録。現在も5ユーロを下回る水準で推移している。

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欧州委は昨年7月、排出枠の需給改善を図るため、13-15年に有償配分する約35億トンの排出枠うち、9億トン分の入札時期を16年以降に先送りする計画を打ち出したが、一部で当局の市場介入に反対する声が根強く、欧州議会は4月の本会議で同構想を否決。しかし、7月には実施条件を厳格化した修正案が承認され、加盟国も修正案の内容で基本合意している。

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本会議で正式に採択された計画案によると、欧州委は関係するセクターが新たなコスト負担によってEU域外への移転を余儀なくされる「重大なリスク」にさらされないことが影響評価で確認された場合に限り、20年までの間で最大9億トン分の入札を延期することができる。欧州議会環境委員会のグローテ委員長は採決を受け、「排出量取引制度は産業界を害するものではなく、むしろまったく逆だが、スキームを効果的に運用するには市場に排出権価格を下支えするとの明確なメッセージを示す必要がある。炭素市場の枠組みは転換点を迎えており、EU-ETSを成熟させることが不可欠だ」とコメントした。

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ブルームバーグによると、欧州委はバックローディングの具体的な実施方法として、14年に4億トン、15年に3億トン、16年に2億トン分の入札を延期する案や、14年からの2年間に4億トン、15年からの2年間に5億トン分の入札を延期する案などを提示しているもようで、年明けから加盟国と欧州議会での協議が本格化するものとみられる。

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