独ガス最大手が政府に支援要請、調達コスト膨張で

ドイツの天然ガス輸入最大手ユニパーは6月29日、公的支援を受ける方向で政府と協議していると発表した。ロシアからの供給の大幅減を受けて調達コストが大幅に膨らみ、今後の資金繰りに懸念が出てきたため。ガス業界が置かれている厳しい状況が鮮明となった格好で、同社の株価は30日に一時20%以上、落ち込んだ。

ロシア国営ガス会社ガスプロムは今月中旬、ガス管「ノルドストリーム1」の供給量を容量の40%へと削減した。ガスプロム最大の国外顧客であるユニパーはこの結果、契約量の40%しか供給を受けられなくなっている。

同社はドイツ国内の供給を可能な限り安定させるため、ロシア産以外の調達を拡大した。ただ、ガス価格は世界的に高騰していることから、スポット市場で購入するとコストは大幅に膨張。これが同社の財務を圧迫している。公的支援では政策金融機関KfWの融資枠拡大や政府の直接出資など様々な可能性が協議されているもようだ。

同国では23日、天然ガスの国内供給不足に対応するための警戒レベルが従来の「早期警戒」から「警戒」へと引き上げられた。警戒が発令されると、政府は「価格調整メカニズム」と呼ばれる措置を導入できることから、ガス会社は調達価格の高騰分を川下に迅速転嫁することが可能になる。だが、多くの企業・家計が破綻するなど深刻な副作用が懸念されることから、政府は実施を見合わせている。

ガス業界ではすでに週10億ユーロの損失が出ているもようで、業界各社の運転資金は急速に目減りしている。政府は価格調整メカニズムの代替策を検討しているが、早急に策定・実施しなければ状況がさらに悪化するのは必至だ。