トルコ中銀が3会合連続利下げ、次回会合での緩和終了も明言

トルコ中央銀行は20日の金融政策決定会合で、主要政策金利である7日物レポ金利を1.5ポイント引き下げ、10.5%に設定した。利下げは3会合連続。市場は1ポイントの下げ幅を予想していた。インフレが記録的な高さにある中、経済支援を優先するエルドアン大統領の意に沿う形で異例の緩和を継続する。

同国のインフレ率は9月に83.45%となり、1998年7月(85.3%)以来の高水準を記録した。インフレ率の上昇は16カ月連続。インフレ高進の背景について中銀は、地政学的な緊張の増大に伴うエネルギーコストの上昇や、金融政策の埒外にある供給側の要因、経済の基礎的な条件を反映していない価格設定の影響などによるものだとする見解を繰り返した。

中銀は声明で、不確実性や地政学的リスクが高まる中、成長の勢いと好調な雇用環境の維持に向けて引き続き金融支援が必要なため、1.5ポイントの追加利下げを決めたと説明。懸念される外需の減速と製造業への圧力について「注意深く監視している」としたうえで、金融政策の波及効果を高めるため信用と担保、流動性に関する政策措置を引き続き実施するとした。また、次回の会合でも今回と「同様の措置」を講じるが、同時に緩和サイクルを終了することを明言した。

■市場はトルコの政策を「持続不可能」と判断、大統領は選挙戦勝利を優先

今回の利下げを受け、通貨リラの為替相場は対米ドルで史上最安値の18.615リラまで下落した。中銀の緩和サイクル終了のガイダンスを受け、キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、リアム・ピーチ氏は、「中銀は高インフレ下での利下げが正しいものではないと認めているようだと」述べつつ、「(次回の会合で利下げをすれば)金利を一桁台まで引き下げたいエルドアン大統領の願望を満たすことになる」とコメントした。

トルコでは来年6月に大統領・議会の同時選挙が予定されている。ブルーベイ・アセットマネジメントのティモシー・アッシュ氏は、現在の中銀の政策はエルドアン大統領が選挙に勝つことを目的にしたものだと指摘。「選挙には勝つかもしれないが、同時に輸入コストを押し上げ、競争力を弱め、確実に経常収支赤字を大きく増やすだろう」との見方を示した。

エルドアン大統領はかねてより、「低金利政策で生産、輸出、雇用を増やせば経常黒字が生み出され、通貨安定・インフレ低下につながる」とする独自の理論に立ち、中銀に対し一貫して金融緩和を求めてきた。今回の中銀の会合に先立ち同大統領は改めて「金利は最大の敵だ」と述べるとともに、自分が大統領である限り「金利は下がり続けるだろう。このことについて、誰も我々に口を出すべきではない」と突き放した。

IPモルガンは顧客向けのレポートで「トルコの金融・経済政策は持続不可能であり、最終的に政策転換か景気後退を余儀なくされる」と強調。政策立案者が景気後退を回避し、為替レートを安定させるために金利を急激に引き上げる可能性が高いとし、2023年には実質金利が25%に上昇すると予想している。

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