英政府は7日、不法移民対策を強化する法案を発表した。英仏海峡を小型ボートで渡ってくる違法入国者が急増していることに対応したもので、難民と認めず、国外追放するという厳しい内容だ。
同法案では英仏海峡を渡って不法入国する人の難民申請を認めず、母国に強制送還するか、「安全な第3国」に引き渡す。再入国は認めない。
英国では2022年、英仏海峡を渡る違法入国者が4万5,000人を超えた。過去2年間を500%も上回る水準だ。
内務省によると、こうした不法入国者も現在は3分の2が亡命を認められるか、人道的な保護を受けている。22年には宿泊支援などで1日当たり600万ポンド(約9億8,000万円)の財政負担を強いられた。
このため、22年10月に就任したスナク首相は1月、優先5課題のひとつとして不法移民対策の強化を挙げていた。
同法案は与党・保守党の支持を受けているが、人権団体などから非人道的で違法だという批判を浴びている。英政府も欧州人権条約に違反する可能性があることを認めた。それでも、スナク首相は「訴訟を起こされることを覚悟で、やるべきことをやる」と発言。「法廷闘争になっても勝利する」と強気の姿勢を貫いた。