欧州中銀が0.5ポイント利上げ、金融不安よりインフレ抑制優先

欧州中央銀行(ECB)は16日に開いた定例政策理事会で、政策金利を0.5ポイント引き上げることを決めた。利上げは6会合連続。米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻で金融不安が広がりつつあるが、ユーロ圏のインフレ抑制を優先し、予定通りの利上げに踏み切った。

主要政策金利は3.0%から3.5%に上がる。民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)は2.5%から3.0%に引き上げられ、2008年以来の高水準となる。新金利は22日から適用される。

ユーロ圏のインフレ率はエネルギー高騰が一服したことで鈍化傾向にあり、2月は前年同月比8.5%と前月から0.1ポイント縮小した。それでもECBが目標とする2.0%を大きく超えている。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、ユーロ圏の23年のインフレ率を5.3%とし、前回(12月)の6.3%から大幅に下方修正したが、25年までは高水準で推移すると予想している。

通常の2倍となる0.5ポイントの利上げは3会合連続。ECBは前回(2月)の理事会で、3月に同水準の利上げを実施することを予告していた。しかし、金融不安が欧州にも飛び火し、経営不振が続くクレディ・スイスをはじめとする銀行の株価が急落していることから、市場では利上げ幅を0.25ポイントに抑えるとの見方があった。

ECBはユーロ圏の金融システムは08年のリーマンショック時と比べて、ECBの銀行監督強化などによって強固な資本と流動性があり、強靱になったと指摘。ユーロ圏の銀行のクレディ・スイスへのエクスポージャーも「極めて限定的だ」(デギンドス副総裁)として、方針を転換しなかった。

理事会筋がロイター通信に明らかにしたところによると、スイス国立銀行(中央銀行)がクレディ・スイスに対する流動性支援を行う用意があると発表したことで、とりあえず金融不安拡大は回避できると判断したことが、予定通りの利上げの決め手になったという。一方、ECBは金融市場の動向を注意深く見守り、必要に応じて金融システムに流動性支援を行う方針も示した。

ただ、ユーロ圏の景気の先行きは不透明だ。ECBは内部予測で、23年の予想成長率について、エネルギー価格が下落していることなどを材料視し、0.5%から1.0%に引き上げた。しかし、24年と25年は1.6%とし、それぞれ0.3ポイント、0.2ポイント下方修正した。ECBによる金融引き締めの影響を考慮した。

ラガルド総裁によると、こうした状況や金融不安がくすぶっていることを受けて、今回の理事会では一部の理事が追加利上げに慎重な姿勢を示した。さらに、同総裁は今後の追加利上げに関してコメントを避けた。

今後の金融政策決定では物価と景気に加え、新たに金融市場の動向も見極める必要があり、ECBは難しい判断を迫られることになる。エコノミストらの間では、利上げは今回が最後になるとの観測も浮上している。

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