EUの財政ルール改正案、加盟国が大枠で合意

EU加盟国は14日に開いた財務相理事会で、EUの財政ルールの改正について協議し、欧州委員会が提示した改革案を大枠で承認した。ただ、一部の細目に関しては合意に至っていない部分もあり、欧州委が今後、詳細を詰める。

EUの財政規律を定めた安定成長協定では、各国に単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、累積債務をGDP比60%以内に抑えることを義務付けている。順守できなかった国には厳しい制裁が課される。しかし、各国の事情を考慮し、これまで制裁が発動された例はなく、ルールが形骸化している。ギリシャの債務危機を未然に防ぐこともできなかった。また、イタリアなど南欧諸国からは規律が厳しすぎ、経済成長に必要な歳出が制限されるという不満も出ている。

こうした状況を受けて、欧州委は2020年2月にルールの総合的な見直しに着手。ルールの簡素化、透明化、将来を見越した投資を促進できるようにルールを柔軟運用することや、制裁制度のあり方などについて諮問作業を行った上で、22年11月に財政ルールの改正案を発表した。厳しすぎるとされる財政規律を見直し、各加盟国の財政健全化を重視しながらも、柔軟な債務削減を可能とし、地球温暖化対策で必要となる環境投資などの障害にならないよう配慮する内容だ。

具体的には、赤字をGDP比3%以内、累積債務を同60%以内に抑えることを求めるルールは継続するが、累積債務が上限を超えた場合に、超過分の20分の1を毎年削減することを義務付ける規定を撤廃し、各国が欧州委と協議した上で独自の債務削減計画を策定できるようにする。

また、各国がどれだけの赤字を抱えているかについて、現行ルールでは構造的赤字を重視しているが、利払いを除くプライマリー収支(基礎的財政収支)に軸を置く方向に転換する。構造的赤字は定義があいまいで、算定が難しく、赤字額を特定する際の基準としてふさわしくないと判断したためだ。

財政赤字を抱える国はプライマリー収支の改善に取り組み、支出を毎年、適正な水準に設定することで、4年間をかけて赤字が安定的に縮小する軌道に乗るようにする。地球温暖化対策などEUが重視する分野への投資や、債務の持続的削減に向けた財政の構造改革で赤字が拡大した場合は、同期間を7年に延長する。

財務相理事会では同案の基本部分について各国が合意した。一方、細目ではプライマリー収支の改善期限の延長に際して、対象国の債務が持続的に縮小するかどうかを欧州委が分析し、可否を判断するという点を巡り、分析の方法論が決まっていない。累積債務が上限を超えた場合の毎年の削減について、共通の指針を設けるかどうかも課題となっている。

欧州委は改正案が23、24日に開かれるEU首脳会議で承認されれば、これらの点について詳細を詰め、具体案をまとめることになる。

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