欧州議会と加盟国が再エネ指令改正案で合意、30年の比率目標引き上げ

EU加盟国と欧州議会は3月30日、再生可能エネルギー指令の改定案で暫定的な政治合意に達した。EU域内のエネルギー消費に占める再生可能エネルギーの比率について、2030年時点の目標を従来の「少なくとも32%」から「少なくとも42.5%」に引き上げることが柱。50年の気候中立を実現するため、EU全体で再エネへの移行を加速させると同時に、ロシア産化石燃料からの脱却を図る狙いがある。欧州議会と閣僚理の正式承認を経て改正指令案が採択される。

欧州委は21年7月、30年までに域内の温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減するための政策パッケージ「Fit for 55」の一環として、再エネ指令の改正案を発表した。欧州委はエネルギー消費に占める再エネ比率を30年までに「少なくとも40%」とする目標を提案していたが、欧州議会は昨年9月の本会議で、これを「少なくとも45%」に引き上げる修正案を可決。最終的に閣僚理との交渉で、目標を「少なくとも42.5%」に設定したうえで、さらに2.5%の引き上げを目指すことで基本合意した。

改正案は運輸や製造業など分野別の再エネ目標も設定している。運輸部門では、加盟国は30年までに◇温室効果ガス排出量を14.5%削減する◇最終エネルギー消費に占める再エネ比率を少なくとも29%とする ―― という2つの拘束力のある目標のうち、いずれかを選んで国内の関連企業に達成を義務付ける必要がある。

製造業では再エネ利用を毎年1.6%拡大させる。また、30年までに製造業で使用する水素のうち42%を非生物学的起源の再生可能燃料(RFNBO)で製造された「再生可能水素」とし、35年までにこの割合を60%に引き上げる。ただし、国別の再エネ目標を達成しているか、消費される化石燃料由来の水素の割合が30年時点で全体の23%、35年時点で20%を超えない場合、加盟国は再生可能水素の比率をEUの定める目標より20%低く設定することができる。

再エネ目標をめぐる議論では、原子力の扱いが最大の争点となっていた。フランスを中心とする原発推進派は、原発から供給される電力で製造された水素を再生可能水素として認めるよう求めたのに対し、オーストリア、ドイツ、スペインなどは風力や太陽光などを利用した発電を推進する取り組みが阻害されかねないと反発。最終的に反対派が譲歩して、原子力由来の低炭素水素を再生可能水素としてカウントし、化石燃料由来の水素の割合が規定以下であることなどを条件に、加盟国が製造業における再生可能水素の比率をEUの目標より20%低く設定できるようにすることで合意した。

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