英のTPP加盟で合意、発足11カ国以外で初

環太平洋経済連携協定(TPP)に加盟する11カ国は3月31日、オンラインで閣僚級会合を開き、英国の加盟を認めることで合意した。2018年の発足時から参加している11カ国以外で新規加盟が認められるのは初めて。英国が加わることで、日本やオーストラリア、カナダなどが参加するアジア太平洋地域の協定が欧州にも広がることになる。

加盟11カ国と英国は「加入交渉の実質的な妥結を歓迎した」とする共同声明を発表。「自由貿易、開かれた競争的市場とルールに基づく貿易システムと経済統合を推進していく」と明記した。

英国は20年末のEU離脱後、アジア太平洋諸国との関係強化を進めており、その一環として21年2月にTPP加盟を正式に申請。同年9月に加盟に向けた作業部会が設置され、22年7月から加盟交渉が進められていた。7月にニュージーランドで開く閣僚級のTPP委員会で協定文書への署名を目指す。その後、加盟各国の承認手続きを経て、英国の加盟が実現することになる。

英国が加盟すると、国内総生産(GDP)の合計額は現在の11.7兆ドル(約1,550兆円)から約15兆ドルに増え、世界全体のGDPに占める割合は12%から15%に拡大する。ただ、英国はTPP加盟11カ国のうち、日本を含む7カ国とすでに2国間の自由貿易協定(FTA)を結んでおり、オーストラリアとニュージーランドとの間でも締結交渉が妥結している。このためTPP加盟による直接の経済効果は限定的なものになりそうだが、TPPを通じてアジア太平洋地域の高い経済成長を取り込む狙いがある。

スナク首相は加盟承認を受けて声明を発表し、「今回の合意はEU離脱でもたらされた自由による、真の経済的利益だ」と強調。TPP発足メンバー以外で初めて、そして欧州から初の加盟により、英国は活力に満ちた、成長を続ける太平洋地域の経済グループの中心に置かれることになり、英国企業は欧州から南太平洋に至る前例のない規模の市場に参入できるようになる」と表明した。

TPPには現在、中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイも加盟を申請している。中国と台湾は21年9月、ほぼ同時にTPPへの加盟を申請したが、中国側はその際、「1つの中国」の原則から、台湾がいかなる協定や組織に加わることも断固反対するとの姿勢を鮮明に打ち出した。一方、中国に関しては、国有企業への不透明な補助金や外国企業に対する技術移転の強要などが問題視されており、TPPが掲げる貿易や投資に関する「高水準のルール」に中国が対応できるかが焦点となりそうだ。

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