欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/11/24

EUその他

都市居住者の9割、高濃度の大気汚染物質に曝露=欧州環境庁

この記事の要約

欧州環境庁(EEA)は19日、欧州の大気質に関する最新報告書を発表した。これによると、欧州では大気汚染物質の排出量や大気中濃度は減少傾向にあるものの汚染は依然として深刻であり、都市居住者の9割が健康に有害なレベルの大気汚 […]

欧州環境庁(EEA)は19日、欧州の大気質に関する最新報告書を発表した。これによると、欧州では大気汚染物質の排出量や大気中濃度は減少傾向にあるものの汚染は依然として深刻であり、都市居住者の9割が健康に有害なレベルの大気汚染物質に曝露し、年間40万人以上が早死にする原因となっているという。

報告書は、欧州38カ国400都市の大気汚染状況を分析。特に深刻な健康被害を引き起こす汚染物質として、粒子状物質(PM)、地表オゾン(O3)、ベンゾピレン(BaP)、二酸化窒素(NO2)を挙げた。中でもベンゾピレンは、都市部での薪ストーブやバイオマス暖房の利用が広がったことによって大気中濃度が2003~12年までに21%上昇した。2012年には都市居住者のおよそ9割が世界保健機関(WHO)のガイドラインを超える濃度のベンゾピレンに曝露しており、EEAでは「懸念が拡大している」と警告している。

報告書はまた、大気汚染に起因する早死にの大部分はPMへの長期曝露によるものであると指摘。2011年はPM2.5が原因で45万8,000人が早死にしたとしている。同時に、地表オゾンへの短期曝露も相当数の死者を出しており、年間1万7,400人が早死にしているとの調査結果を示した。

大気汚染は健康被害をもたらすだけでなく、富栄養化や酸性化、植物の枯死など環境も脅かす原因にもなっている。報告書では環境被害の最も大きな原因物質としてO3、アンモニア、窒素酸化物を挙げ、12年には農村地域の87%でEUが長期目標としているO3の基準値を超えたと指摘。一方で、黒色炭素やメタンなどの一部の汚染物質については削減策が効果をあげているとしたうえで、「大気質と気候変動は総合的なアプローチによって策定された政策と措置を通じた取り組みが可能だ」と強調した。