ギリシャ政府は4日、国際通貨基金(IMF)に5日が期限となっている債務返済を月末に延期することを通知した。EUの金融支援再開に向けた協議が難航し、資金繰りが厳しくなっているためで、6月中に期限を迎える他の3回の返済と合わせて月末に一括して支払う。
EUによる金融支援は、ギリシャが条件として約束した財政再建をめぐる対立から昨年夏から凍結状態にある。双方は2月下旬に同月末が期限だった金融支援を6月末まで延長することで合意し、同問題について協議しているが、1月に発足したギリシャの新政権が財政緊縮に消極的なため溝が埋まらず、時間切れが近づいている。6月末までに財政再建で合意できなければ支援は失効となり、ギリシャは残る72億ユーロの融資を受ける権利を失う。
5日が期限だったIMFへの返済額は約3億ユーロ。他の3回分と合わせ、月末に総額約15億ユーロを一括返済する。IMFは債務国が1カ月の返済を一本化し、月末に支払うことを認めているが、同制度が適用されるのは1980年代のザンビア以来、2件目となる。
ギリシャの財政再建策をめぐっては、同国政府が事態打開に向けて1日に新提案を提出。債権者側の欧州委員会と欧州中央銀行(ECB)、IMFが2日、ギリシャへの要求案をまとめ、3日に提示した。同提案の内容は公表されていないが、ロイター通信などによると、来年から年金支給を減らし、国内総生産(GDP)比1%に相当する減額を行うことや、電気代などの付加価値税(VAT)引き上げを求めるなど、ギリシャ側にとって依然として厳しい内容。選挙で財政緊縮放棄を公約した現政権にとっては、一線を越える妥協を迫られるため、3日に開かれたチプラス首相と欧州委員会のユンケル委員長との会談は物別れに終わった。同首相は5日、ギリシャ議会で行った演説で、「これまでになく合意に近づいている」としながらも、EU側の提案は「不条理だ」と述べ、低所得層にしわ寄せが及ぶ改革に抵抗していく姿勢を示した。
チプラス首相は3日の時点で、5日が期限のIMFへの返済は問題ないとの見解を示していた。IMF内でも、ギリシャの資金繰りは厳しいものの、3億ユーロ程度は融通できたはずとの見方が出ている。このため、方針転換して返済先送りに踏み切ったのは、ギリシャが切羽詰っていることを強調し、EU側の歩み寄りを引き出すという戦略とみる向きもある。