欧州司法裁判所は4日、英国があらゆるタイプの住居に設置される省エネ関連の設備や機器に対し、付加価値税(VAT)の軽減税率を適用しているのはEUルールに違反するとの判決を言い渡した。公営住宅か個人の持ち家かに関係なく、一律に軽減税率を適用する英国の制度はEUのVAT指令に違反するとして、英政府を提訴した欧州委員会の主張が認められたかたち。キャメロン政権は2020年までVATを据え置く方針を掲げているが、今回の判決を受け、省エネ関連製品に対する税率を見直す必要に迫られることになる。
VAT税率はEU指令により、標準税率の下限が15%と定められている以外は加盟国に設定の権限が与えられており、食品、水道水、医薬品、書籍など21項目の製品やサービスについて軽減税率の適用が認められている。英国では標準税率の20%に対し、省エネ推進策の一環として断熱材、太陽光パネル、風力タービン、セントラルヒーティングなどに5%の軽減税率が適用されている。
英政府は省エネ関連の設備や資材に対する減税措置の法的根拠について、VAT指令で軽減税率の適用が認められている製品やサービスのうち、「社会政策の一環として提供される住居の建設、修繕、リフォーム」という項目に該当すると説明している。欧州委はこれに対し、公営住宅や福祉施設などと異なり、個人の持ち家は「社会政策」とは関係がないため、軽減税率の適用対象として認めることはできないと主張。省エネ推進策としても、軽減税率を適用するより補助金を交付する方が効果的と指摘していた。最終的に欧州裁は欧州委の主張を支持し、住居のタイプを区別せず、一律に軽減税率を適用する現行システムは「違法」と結論づけた。
英政府は早急に国内法をVAT指令に適合させる必要があり、適切な対応をとらなければ制裁金を科される可能性がある。現実的な解決策として、公営住宅などについては減税措置を維持する一方、持ち家に太陽光パネルなどを設置する場合は標準税率を適用する方法などが考えられるが、所得税や社会保険料と共に、VATを向こう5年間据え置く方針を掲げるキャメロン政権は難しい課題を突き付けられた格好だ。