欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/6/22

EU情報

ユーロ圏が22日に臨時首脳会議、ギリシャ支援問題の決着目指し

この記事の要約

ユーロ圏19カ国は18日、ルクセンブルクで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議したが、進展はなく物別れに終わった。支援の期限が月末に迫り、ギリシャのデフォルト(債務不履行)とユーロ離脱が現実味を増す中、ユ […]

ユーロ圏19カ国は18日、ルクセンブルクで財務相会合を開き、ギリシャの金融支援問題について協議したが、進展はなく物別れに終わった。支援の期限が月末に迫り、ギリシャのデフォルト(債務不履行)とユーロ離脱が現実味を増す中、ユーロ圏は首脳レベルで打開を図るため、22日に臨時首脳会議を開催することを決めた。

焦点となっているのは、EUによる金融支援再開の条件となっているギリシャの財政改革。EU、国際通貨基金(IMF)など債権者側は、前政権が進めていた厳しい財政緊縮策の継続を主張し、年金削減や電気代の付加価値税(VAT)増税といった構造改革を求めているが、反緊縮を掲げて1月に発足した新政権が抵抗し、協議の難航が続いている。

EU側はギリシャのデフォルトを回避するため、先ごろ妥協案としてプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字目標の引き下げに応じ、新目標の達成に向けた具体案の提示を要求。その一環として、年金支給額について年間ベースで国内総生産(GDP)の1%に相当する20億ユーロの減額を求めている。これに対してギリシャが示した提案にめぼしい内容はなく、年金削減も7,100万ユーロ(GDP比0.04%)とEU側の要求と大きな開きがある。今回の財務相会合でも、これらの点での溝は埋まらなかった。

ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長は会合後の記者会見で、「残念ながら、ほとんど進展はなかった。合意は視界に入っていない」とコメント。「ボールはギリシャ側のコートにある」と述べ、ギリシャに新たな提案を示すよう呼びかけた。

ギリシャは月末までに財政改革で合意しないとEUの金融支援が失効し、残る72億ユーロの融資を受けることができなくなる。月末に期限を迎えるIMFへの16億ユーロ返済に行き詰まり、ついにデフォルトに陥る。IMFのラガルド専務理事は18日、ギリシャの返済に「猶予期間はない」と述べ、30日までに返済されなければデフォルトとみなすと明言した。こうした情勢を受けて、ギリシャ国内ではデフォルト、さらにはユーロ離脱を懸念し、銀行からの預金流出が加速しており、政府が資本規制導入に踏み切るとの観測も浮上している。

ユーロ圏はEUのトゥスク大統領(欧州理事会常任議長)の決定に基づき、22日午後7時にブリュッセルで臨時首脳会議を開き、決着を目指す。デフォルトを回避するための最後のチャンスとなるが、債権者、ギリシャ側ともこれまでに十分譲歩したと主張しており、さらなる歩み寄りは困難な情勢。ギリシャはロシアをEUに代わる後ろ盾とすることをちらつかせて同国に接近し、揺さぶりをかけているが、EUのトゥスクEU大統領(欧州理事会常任議長)は19日、「ギリシャはEUの提案を受け入れて引き続き支援を受けるか、デフォルトに向かうかの分岐点に近づいている」とする声明を発表し、譲歩を促した。

ユーロ圏の高官がロイター通信に明らかにしたところによると、ユーロ圏の財務相は臨時首脳会議に先立って会合を開く予定。この場でギリシャが新たな提案を出さなければ見切りをつけ、首脳会議ではデフォルトへの対応を協議する方針という。