欧州委員会は17日、法人税制の抜本的な改革に向けた行動計画を発表した。企業の課税逃れを防止するのが主眼で、課税ベース算定の共通ルールとなる「共通連結法人税課税標準(CCCTB)」を導入し、EUの複数国で事業を展開する多国籍企業に適用する。
CCCTBは欧州委が2011年に提唱したもの。課税利益を共通の基準で計算し、連結した上で、グループの代表企業が単一の申告書を作成し、申告を行うという内容だった。連結された利益は各拠点の売上高、資産、従業員数などに基づく公式に従って、関係する加盟国に配分され、各国の税率で法人税を支払う仕組みとなる。しかし、税制の統合に批判的な英国、アイルランドが反発して協議が紛糾し、棚上げ状態となっている。
同制度導入の当初の目的は、加盟国によって法人税の課税標準が異なるため、グループ企業の各法人が個別に法人税を処理することで税務コストがかさむといった問題に対応する点にあった。欧州委は今回、EU内で多国籍企業の租税回避問題が相次いで浮上していることを受け、同制度が課税逃れ対策としても有効と判断し、復活に乗り出した。
このため、当初の案では任意となっていた多国籍企業のCCCTB採用を義務付ける。ただし、本丸と位置づけるグループ内の各企業の利益、損益の連結は先送りし、まず課税利益の計算基準を統一する。段階的に導入することで加盟国の賛同を取り付けやすくするためで、連結は第2段階として検討することを提案している。欧州委は同案の詳細を2016年にまとめる方針だ。
このほか欧州委は同日、脱税対策の一環として、租税回避地として課税逃れを助長させている国・地域の“ブラックリスト”を初めて発表した。英領バージン諸島やケイマン諸島、ベリーズ、パナマ、香港、モナコ、アンドラ、モナコなど30カ国・地域が対象で、欧州委は国際基準に沿った脱税防止策を講じるよう呼びかけている。