欧州議会は14日、自動車排ガス試験の厳格化を盛り込んだ新たな規制案について、今月下旬に予定していた本会議での採決を延期した。独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受け、EU加盟国は新たに実走行試験を導入する一方、移行措置として窒素酸化物(NOx)の排出基準を一時的に緩和する規制案の内容で合意していたが、欧州議会環境委員会は先月、これに反対する決議を採択。本会議での採決に注目が集まっていた。
VWが規制逃れのため、一部のディーゼルエンジン車に試験時だけ排ガス浄化機能をフル稼働させる違法ソフトを搭載していた問題を受け、EU加盟国の代表で構成する自動車技術委員会は昨年10月、2017年9月から室内での試験に加えて新たに「実走行排ガス試験(RED)」を導入することを決めた。ただ、路上走行時のNOx排出量は現行規制の排出上限(走行1キロメートル当たり0.08グラム)の平均5倍に上るとされ、あらゆる環境や条件下で室内試験と同じ規制値を満たすことは技術的に困難。このためNOxの排出上限を一時的に緩和し、新型車は17年9月(既存モデルの新車は19年9月)まで現行の規制値の2.1倍、その後20年1月(既存モデルは21年1月)までは1.5倍まで超過を認める移行措置を盛り込むことで合意した。
しかし、欧州議会ではより厳格な規制を求める声が根強く、環境委は加盟国の提案に反対する決議を圧倒的多数で採択。月内に本会議で採決が行われる予定だった。ただ、加盟国の合意内容が最終的に否決された場合、欧州委員会は新たに規制案を策定しなければならず、検査体制の見直しが大幅に遅れる公算が大きい。このため14日の本会議では、妥協点を探る必要があるとして、最大会派で中道右派の欧州人民党(EPP)グループと第2会派で中道左派の社会民主進歩同盟(S&D)が採決の延期を要求し、賛成多数で承認された。採決は2月初めに実施される見通しだ。