欧州委員会は19日、EU加盟国が個別に管理する犯罪記録を統合する「欧州犯罪記録情報システム(ECRIS)」を拡充し、非EU国籍の犯罪者に関する情報をデータベースに取り込む計画を発表した。EU全体でテロや国境をまたいだ重大犯罪に対処するため、加盟国の司法当局や警察や円滑に情報交換できるようにするのが狙い。第3国出身者や無国籍者は本人確認が困難なケースが多いため、氏名や生年月日などの基本情報や犯罪経歴に加えて指紋もデータベースに登録する。今月26日に開く非公式の司法・内相会議で同構想を正式に提案し、その後、欧州議会と閣僚理事会で検討する。
EUは域内における人の自由移動を保障する一方、加盟国間で警察・刑事司法協力を強化する取り組みを進めており、その一環として2012年4月にECRISを立ち上げた。これにより、各国の警察、検察、裁判所は域内のいずれかの国で有罪判決を受けたEU市民の犯罪記録に直接アクセスできるようになった。しかし、非EU国籍者の犯罪記録は引き続き有罪判決を出した国が管理しており、ECRISのデータベースには登録されていないため、国境をまたいだ犯罪やテロ事件などの捜査や裁判にあたり加盟国間で情報共有が十分に行われてこなかった。
これまで各国が個別に管理していた非EU国籍者の犯罪記録をECRISに登録すれば、氏名や生年月日から被疑者の前科・前歴などを迅速に調べることができ、より正確な情報に基づく合理的な司法判断や犯罪予防が可能になる。ただ、非EU国籍者や無国籍者の場合、偽造身分証を使った犯罪では本人確認が極めて困難なため、欧州委は犯罪記録と同時に指紋もデータベースに登録することを提案している。
欧州委のヨウロヴァ委員(法務・消費者・男女平等担当)は「昨年11月のパリ同時多発テロを機に、EU全体で早急に刑事司法協力を強化しなければならないことが明らかになった。ECRISは国境をまたいだ犯罪に対処するための重要なツールだ。同システムを拡充し、加盟国が非EU国籍者の犯罪記録を共有することで、より確実にEU市民の安全を守ることができる」と述べている。