EU統計局ユーロスタットが1月29日発表したユーロ圏の同月のインフレ率(速報値)は前年同月比0.4%となり、前月の0.2%から0.2ポイント上昇した。これは2014年10月以来の高水準。ただ、依然として欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%を大きく割り込んでおり、市場ではECBが3月に追加金融緩和に踏み切るとの見方が揺らいでいない。
分野別ではエネルギーが5.3%下落したものの、マイナス幅は前月の5.8%から縮小した。工業製品は0.7%、サービスは1.2%の上昇となり、上げ幅はそれぞれ前月を0.2ポイント、0.1ポイント上回った。食品・アルコール・たばこを除いた基礎インフレ率は1%で、前月から0.1ポイント上昇した。
ECBのドラギ総裁は21日に開いた定例政策理事会後の記者会見で、ユーロ圏経済は中国の景気失速、原油安などによって「下振れリスクが強まっている」として、3月10日に開く次回の理事会で追加金融緩和を検討する意向を表明。これを受けてECBが量的緩和策として実施している国債買い取り規模を引き上げ、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅を拡大するとの観測が広がった。
1月の物価が基礎インフレ率も含めて上昇したことで、デフレ懸念はやや遠のいた格好となる。しかし、インフレ率は目標に程遠い。物価上昇も比較対象となる前年同月に原油価格の下落が急速に進んだ「ベース効果」が大きな要因で、原油安は続いている。さらに、ECBが先ごろ発表したユーロ圏の銀行による12月の企業向け融資は0.3%増と低水準にとどまり、昨年3月に開始した量的緩和の効果が不十分であることが浮き彫りとなった。このため市場では、次回の理事会で追加金融緩和を決めるとの見方が有力。ロイター通信によると、アナリストらはマイナス金利拡大を確実視している。ただ、国債買い取り規模の拡大にも踏み切るかどうかについては見方が交錯しているという。