年内にシェンゲン協定正常化、欧州委が工程表発表

欧州委員会は4日、EU域内の大半で自由な移動を認める「シェンゲン協定」を年内に正常化させるための工程表を発表した。難民危機に対応するため、一時的に国境審査を復活させる動きが相次ぐなか、加盟国の単独行動を阻止し、EUとして結束を保つ狙いがある。

シェンゲン協定は治安などに深刻な脅威がある「例外的な状況」に限り、協定に参加する26カ国が原則6カ月の期限付きで国境審査を再導入し、その後、最長2年まで同措置を継続することを認めている。昨秋以降、同条項に基づいてドイツ、オーストリア、フランス、デンマーク、スウェーデンなど8カ国が国境審査を復活させており、ギリシャが早急に状況を改善しなければ、EU加盟国の多くが同措置を2年間継続することになり、シェンゲン協定は実質的に崩壊するとの懸念が広がっている。

欧州委は域内で国境審査が全面的に復活した場合、年間で最大180億ユーロの経済的損失が生じると警告。アブラモプロス委員(移民・内務担当)は会見で、トルコ経由でギリシャに入った難民らが最終目的地のドイツなどに向かう際の移動ルートになっているバルカン諸国や中・東欧諸国で、独自に入国制限を設けたり、国境管理を強化する動きが広がっている現状に言及。「加盟国が独自の判断で一方的に行動するのではなく、EUとして共通のアプローチをとり、シェンゲン協定に加盟する多くの国が国境審査を一時的に復活させている異常事態を年末までに収束させる必要がある」と強調した。

工程表によると、欧州委はギリシャなどの現状を踏まえ、3月半ばに「ダブリン規則」の見直し案をまとめる。同規則は域外からの難民が最初に到着した国で難民申請を受け付けることを定めたEUのルールだが、大量の難民が押し寄せるギリシャやイタリアなどでは対応が追いつかず、同システムは事実上、破綻状態にある。一方、ギリシャは域外との国境管理を適切に実行するよう求めたEU首脳会議の勧告に基づき、5月12日までに実施状況を欧州委に報告する。依然として同国の国境管理に「深刻な不備」があり、状況に改善がみられない場合、欧州委はシェンゲン協定の規定に基づいて加盟国に国境管理の強化を提案する。このほか欧州が創設を提案しているEU全体で域外との国境警備にあたる「欧州国境沿岸警備隊」について、遅くとも8月までに始動させるとの目標を盛り込んだ。

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