EU加盟国と欧州委員会は14日、域内の農家がロシアの輸入禁止措置などで苦境に直面している問題への対応を強化することで合意した。乳製品と豚肉、果物、野菜の生産者に追加支援を実施する。
EUは2014年、ロシアがウクライナ問題をめぐる欧米の経済制裁に対抗して発動した禁輸措置によって、域内の農産物の多くが行き場を失い、供給過剰となって値崩れを起こしていることを受けて、生産者が出荷を取りやめた場合などに補償を行う支援措置を開始。昨年9月には追加措置として、とくに大きな打撃を受けている酪農家を中心に総額5億ユーロの緊急支援を実施することも決めた。
今回の追加支援は、供給過剰が中国の需要減退も加わって深刻化していることを受けたもの。加盟国による農家への補助金支給を制限する措置を緩和し、各国が乳製品、豚肉、果物、野菜の生産者に対して一時的に多くの支援を行えるようにする。6月末が期限となっている野菜・果物農家向けの現行支援の延長も検討する。
約30年間にわたって続けてきた牛乳の生産割り当て制度が15年3月31日に廃止されたこともあって乳価の下落が進み、とくに厳しい状況に陥っている酪農家に対しては、バターと脱脂粉乳(スキムミルク)をEUが市場介入価格で買い上げる制度の数量制限を緩和し、買い上げ量を約2倍に引き上げる。また、業界団体などによる生産調整を制限する措置も緩和する。
豚肉生産者に対しては、在庫調整によって供給を制限する措置を強化する。このほか欧州委は、EUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)が域内農家に金融支援を実施する制度の導入を検討していくことを明らかにした。