欧州中央銀行(ECB)は2日にウィーンで開いた定例政策理事会で、現行金融政策の維持を決めた。ユーロ圏の消費者物価は低迷しているが、3月に決めた追加金融緩和の効果を見極める必要があると判断した。
同日の理事会では、主要政策金利を0%、民間金融機関が余った資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)をマイナス0.4%に据え置いた。量的緩和策の拡充も見送った。
ユーロ圏の景気は堅調で、2016年1~3月期の域内総生産(GDP)は前期比で0.5%増となった。ECBは同日発表した最新の内部経済予測で、16年の予想成長率を1.6%とし、前回(3月)の1.4%から0.2ポイント上方修正した。しかし、インフレ率はマイナスとなっている。
それでもECBが追加緩和を見送ったのは、3月に発表した緩和策のうち社債の買い入れ、新たな長期資金供給オペ(LTRO)が実施されておらず、それぞれ6月8日、22日に開始されるため。低迷していた原油価格が上昇に転じていることで、物価も上昇するとの判断も働いたもようだ。内部予測では今年の予想インフレ率を0.1%から0.2%に上方修正した。
ただ、ECBのドラギ総裁は理事会後の記者会見で、「ユーロ圏では依然として成長の下振れリスクがある」と述べ、4~6月期のGDP伸び率が前期を下回る可能性があると指摘。必要に応じて追加金融緩和に踏み切る用意があることを強調した。
一方、市場ではギリシャの金融支援をめぐる協議が先ごろ妥結したことを受けて、ECBが同国の銀行への低利融資を再開するかどうかに注目が集まっていたが、これに関する発表はなかった。
ECBは2010年5月、信用不安で厳しい状況に直面するギリシャの銀行を支援するため、投資不適格級となっているギリシャ国債も特例的に担保として受け入れることで資金を供給する措置を開始した。しかし、反緊縮を掲げるチプラス政権が15年1月に発足し、EUなどによる金融支援の条件として約束していた財政再建策を放棄する姿勢を打ち出したことから、同年2月に中止していた。