米IT4社がヘイトスピーチ対策で欧州委と合意、24時間以内に違法書き込み削除

欧州委員会は5月31日、米IT大手4社が違法なヘイトスピーチ(憎悪表現)の拡散を防止するための行動規範に合意したと発表した。難民危機やテロの脅威を背景に、インターネット上で特定の人種や民族などに対して差別や憎しみをあおるヘイトスピーチが横行するなか、IT業界と連携してEU全体で対策を強化する。

合意書に署名したのはフェイスブック、ツイッター、マイクロソフト、グーグル傘下のユーチューブ。各社はヘイトスピーチの削除を求める通報を受けた場合、原則として24時間以内に投稿内容をチェックし、自社の利用規約やEUの指針に沿って違法性を判断。必要があれば速やかに書き込みを削除するか、閲覧できないようにする。行動規範に法的拘束力はないが、このほかユーザーに対する啓発活動、従業員に対するトレーニング、他のソーシャルメディアなどとのベストプラクティスの共有を各社に求めている。

欧州では中東や北アフリカから流入する難民の急増や3月のベルギー同時テロなどを背景に、人種差別や外国人排斥を扇動するヘイトスピーチの問題が深刻化している。ソーシャルメディアなどを利用したテロ組織によるプロパガンダへの対応も急務になっている。ドイツ政府は昨年、フェイスブック、ツイッター、グーグルとの間で、可能な限り通報から24時間以内に違法な書き込みを削除することで合意するなど、加盟国はこれまで独自に対策を進めてきたが、難民危機やテロの脅威が増すなか、EU全体での対応を求める声が高まっていた。

欧州委のヨウロヴァ委員(法務・消費者・男女平等担当)は声明で、「欧州でここ数カ月に起きた一連のテロ攻撃は、ネット上の違法なヘイトスピーチへの対策が急務であることを再認識させた。残念ながらソーシャルメディアはテロ組織が若者たちを過激な行動に走らせたり、人種差別主義者が暴力や憎悪を拡散するためのツールの1つとして利用されている」と指摘した。

一方、ツイッターの担当者は「表現の自由と暴力や憎悪をあおる言動には大きな違いがある」と強調。同社では昨年半ば以降、12万5,000件に上る過激派組織「イスラム国」(IS)関連のアカウントを凍結した点に触れ、今回の合意によって業界全体でヘイトスピーチ対策が進むとの見方を示した。

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