欧州委員会は1日、ポーランド政府が「法の支配の原則」を侵したとする意見書をまとめ、是正を勧告した。保守系の新政権が進めてきた司法やメディアに対する権限強化に向けた政策のうち、特に憲法裁判所の権限を制限し、司法の独立性を脅かす内容の法改正がEUの基本的理念の柱をなす法の支配の原則に反すると指摘している。ポーランド政府は2週間以内に意見書に対する回答を求められており、是正の意思がみられない場合、EUの政策決定に関わる議決権を制限するなどの厳しい措置がとられる可能性もある。
欧州委は昨年11月に発足したシドゥウォ政権が行った憲法裁判所の運営に関する法改正などを問題視し、1月からポーランドにおける法の支配の現状について本格的な調査を進めていた。欧州委のティメルマンス第1副委員長は会見で「1月以来、ポーランド政府と対話を続けてきたが、解決策を見出すことはできなかった」と説明。シドゥウォ政権は憲法裁判所の運営をめぐる法改正を見直す必要があると強調したうえで、引き続きポーランド側との「建設的な対話」の用意があると述べる一方、「欧州委にはすべての加盟国にEU法を遵守させる義務がある」と言明した。
欧州委が最も問題視しているのは、憲法裁判所で違憲判決を下す際に必要な判事の同意を、従来の過半数から3分の2に引き上げた法改正。同措置によって法案を通すハードルが低くなり、政権に権力を集中しやすくなる。このほか1月には公共放送の幹部を担当閣僚が任免できる法律が施行され、総裁が解任された。
欧州委が法の支配の原則に対する侵害で加盟国を正式に非難したのは今回が初めて。ポーランド政府の報道官は欧州委との対話を通じて解決策を模索したい考えを示したが、シマンスキー外務副大臣は「欧州委がいかなる意見であろうと、ポーランドは独自に答えを出す」と述べ、強硬路線を貫く構えをみせた。