特定言語での書類作成、義務化はEU法違反=欧州裁

EU司法裁判所は22日、国境をまたいで商取引を行う企業に対し、インボイスなどの書類を特定の言語で作成するよう義務づけることは、域内における物の自由移動を保障したEU法に違反するとの判決を下した。

今回の事案は、ベルギーのベビー用品販売大手ニュー・バルマー(New Valmar)が発行したイタリア語のインボイスは無効だとして、医薬品卸売販売業の伊グローバル・ファーマシーズ・パートナー・ヘルス(GPPH)が支払いを拒否したことが発端。ニュー・バルマーが本社を置くベルギー北部フランデレン地域の法律は、同地域に拠点を置く企業に対し、国境をまたいだ取引に関する書類を公用語のオランダ語で作成するよう義務づけ、他の言語で作成した書類は「無効」とみなすと定めている。GPPHはこの法律を根拠に、ニュー・バルマーに対する支払い義務はないと主張し、ニュー・バルマー側が訴えを起こした。

ニュー・バルマーは係争中、取引に関するすべての書類にオランダ語の翻訳を添付する改善策を講じたが、ベルギーの裁判所は同社が発行したインボイスは「無効」と結論づけた。ニュー・バルマーは判決を受け、インボイスをオランダ語で作成しなかった点については同社の過失だったと認めたうえで、国外の企業との取引に際して特定言語の使用を強制する法律は、物の自由移動を制限するものでEUルールに違反すると主張。ゲントの商事裁判所がEU司法裁に対し、フランデレン地域の法律とEU法との整合性について判断を求めていた。

司法裁は判決で、同地域の法律は公用語であるオランダ語の使用を奨励するとともに、行政機関が書類をチェックしやすくすることを主な目的としており、法制化の意図自体は理解できると説明。そのうえで、商取引において双方が理解できる共通言語の使用を制限し、企業に特定言語での書類作成を強要することは「目的の達成に必要なレベルを超えた要求であり、著しくバランスを欠く」と指摘。フランデレン地域の法律は「EU法に合致しているとはいえない」と結論づけた。

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