独英証取の合併計画に暗雲、英のEU離脱決定で

ドイツ取引所とロンドン証券取引所(LSE)グループは24日、英国が国民投票でEU離脱を選択したことを受けて共同声明を発表し、引き続き合併計画を進める方針を改めて表明した。両社は今月1日に公開した株主向けの書類で、合併計画は国民投票の結果に左右されないと明言しており、7月初めに開かれるLSEの株主総会などを前にこれを念押ししたかたち。ただ、ドイツ側では英国がEUから離脱するにもかかわらず、グループ全体を統括する持ち株会社をロンドンに設立する点を問題視する声が上がっており、両社は計画の見直しを迫られる可能性もある。

ドイツ取引所とLSEグループは声明で「両社の取締役会は国民投票の結果が合併の論理的根拠に影響を及ぼすことはないと確信している」と強調。合併の実現に向けて「英独政府および規制当局と建設的な対話を進めている」と説明した。また、ドイツ取引所のケンゲーター社長は公共放送ARDに出演し、「英国がEU離脱を選択したことは欧州にとって痛手だが、一方で、EUの改革に向けて建設的な議論を本格化させるチャンスでもある」と指摘。「ドイツが引き続き経済的な強みを維持するため、他の金融センターとの統合に向けてできることをすべて行うことが重要だ」と述べた。

こうしたなか、ドイツの規制当局者や有力政治家などからは、英国のEU離脱が合併計画に及ぼす影響を懸念する声が相次いでいる。メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)幹部で与党会派副議長のフックス議員はロイター通信の取材に対し、「英国のEU離脱が決まった以上、統合新会社の拠点をロンドンに置くことはできない」と発言。独政府は英国に持ち株会社を設立する計画を阻止するため、適切な措置を講じるべきだとの考えを示した。ドイツ取引所の地元ヘッセン州のブフィエ首相も、フランクフルトに新会社の拠点を置くべきだと述べた。また、同州のアルワジール副首相はフェイスブックへの投稿で、「英国のEU離脱を考慮して合併認可の審査を進めることになる。当面は合併計画に変更があるかどうか、推移を見守る」とコメントしている。

ドイツ取引所とLSEグループは3月に合併合意した。両社の株主と関係当局の承認を経て合併が実現すると、売上高で世界最大の取引所グループが誕生する。両社の首脳陣は当初、英国で国民投票が実施される前に合併計画に対する株主の承認を得たい考えだったが、ドイツ側の強い反発で断念。LSEグループは7月4日に臨時株主総会を開き、合併の是非を決議する。一方、ドイツ取引所では株主総会は開かれず、株主は同12日までに合併受け入れについて意思表示する必要がある。両社とも株主の75%以上の支持を合併の成立条件としている。

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