EUと米国は11~15日にブリュッセルで環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の第14回交渉会合を開き、難航している非関税障壁の削減や規制の調和などについて協議を行った。オバマ米大統領の残り任期が半年となるなか、双方は年内の合意を目指す方針を確認したが、TTIP推進派の英国がEU離脱を決める一方、来年に選挙を控えたフランスとドイツではTTIP反対の声が高まっており、交渉の行方は予断を許さない。
EUのガルシアベルセロ首席交渉官と米国のマラニー首席交渉官は交渉会合終了後の共同会見で、オバマ大統領の任期が切れる来年1月までの妥結を目指すことで双方が一致したと強調。そのうえで、ガルシアベルセロ氏はEUが求める公共調達市場の開放が十分に進んでいないと指摘し、マラニー氏はサービス分野の貿易自由化に向けたEUの対応が「あまりにも遅い」と不満をもらした。
マラニー氏はさらに、英国のEU離脱問題に言及し、「仮にカリフォルニア州にTTIPが適用されない事態を想像してみてほしい」と発言。「米国にとって英国はサービス分野で最大の貿易相手であり、EU向け輸出の25%を英国が占めている。TTIPが極めて大きなメリットをもたらすことに変わりはないが、同時に英国の離脱がEU市場の価値に影響を及ぼすことも事実だ」と述べ、英国のEU離脱がTTIPにもたらす影響を慎重に分析する必要があるとの考えを示した。
EUと米国は貿易と投資に関するあらゆる障壁の撤廃を目指し、2013年7月にTTIP交渉を開始した。当初は14年末までの大筋合意を目指していたが、投資家保護の仕組み、食品や自動車などの安全基準、環境保護や個人情報保護などに関連した規制の調和などをめぐって交渉が難航している。
双方は年内の合意に向けて交渉を加速させるため、7月末までに協定案を一本化する計画だった。しかし、ガルシアベルセロ氏によると、欧州委のマルムストローム委員(通商担当)とフロマン米通商代表部(USTR)代表の会合をはさんで「(一本化の作業は)9月末にずれ込む公算が大きい」という。さらにEU高官の間では、来年に実施されるフランスの大統領選挙とドイツの総選挙が終わるまで、TTIP交渉が中断されるとの見方も出始めている。