欧州委員会は14日、EU域内の中小企業や社会起業家向け投資ファンドの運用・販売ルール定めた「欧州ベンチャー・キャピタル・ファンド(EuVECA)規則」と「欧州社会起業家ファンド(EuSEF)規則」の改正案を発表した。ベンチャーキャピタル(VC)投資や社会課題の解決を目的とするプロジェクトへの投資を促進するため、ファンド運用者の要件を緩和して運用資産の上限を撤廃することなどを提案している。欧州議会と閣僚理事会で両規則の改正案について検討する。
欧州では資本市場が発達している米国と比べて企業金融における銀行貸出の比率が高いため、先の金融危機では信用収縮によって企業の資金調達に困難が生じ、域内経済に深刻な影響が及んだ。EUはこうした反省を踏まえ、中小企業が銀行に依存せず多様なルートで資金調達しやすくすることを目的として、2013年にベンチャーキャピタルと社会起業家への投資に特化したファンドのマーケティング活動などに関する共通ルールを定めた2つの規則を導入した。
ただ、現行規則によると、マーケティング・パスポート(域内のある国で登録すればEU全域で販売できる制度)の適用を受けることのできるVCファンドまたは社会起業家ファンドの運用者は、EU域内に拠点を置き、自国(EU加盟国)の規制当局に登録していることに加え、運用資産が5億ユーロ以下であることが要件となっている。そのため資産規模の大きいヘッジファンドやプライベートエクイティ(PE)ファンドなどのオルタナティブ投資ファンド運用者(AIFM)は、国境をまたいでVCファンドや社会起業家ファンドを運用・販売することができず、欧州におけるVC投資額は約50億ユーロと、依然として米国の5分の1程度にとどまっている。
欧州委はこうした現状を改善し、域内の中小企業や社会起業家が国境を越えて資金調達しやすくするため、VCファンドまたは社会起業家ファンド運用者の要件から運用資産の上限(5億ユーロ)を撤廃し、大規模ファンドの運用者もEuVECAまたはEuSEF規則を利用して、EU全域でマーケティングを展開できるようにすることを提案している。改正案にはこのほか、EuVECA規則の適用対象を拡大し、中小新興企業市場(SME growth markets)に上場している企業をVCファンドの適格投資資産に加えることや、登録手続きの簡素化、規制当局による手数料の徴収禁止などが盛り込まれている。