製薬・化学大手の独バイエルは14日、米農業化学大手モンサントに提案している買収の条件を引き上げたと発表した。モンサントが株式公開買い付け(TOB)受け入れを拒否していることを受けたもの。モンサントをめぐっては独BASFの農業化学事業を買収する方向で交渉しているとの観測が13日に浮上したばかりで、バイエルは迅速に対応した格好だ。
バイエルは5月23日、モンサントを1株当たり122ドルで買収する考えを表明した。これは過去3カ月の加重平均株価を36%上回る水準で、モンサントの企業価値を620億ドルと評価したことになる。
これに対してモンサントは翌日、買収提案はモンサントの企業価値を過小評価しているほか、財務・規制上のリスクも十分に考慮していないとして、受け入れ拒否を表明。ただ、買収そのものは拒否しておらず、両社は協議を進めてきた。
バイエルは今回、株式買い取り価格を3ドル引き上げ、125ドルとした。モンサントとの協議で得た新たな情報を反映させたとしている。全株式を取得した場合の買収総額は635億ドルに上る。
バイエルは声明で、買い取り価格引き上げの意向を1日に口頭で伝え、9日に正式に提案を行ったことを明らかにした。モンサントが懸念を表明していた財務・規制上のリスクについても、すでに説明を行ったとしている。
具体的には◇買収計画に対し規制当局が事業の部分売却など修正を要求した場合、バイエルは応じる◇規制当局が買収を認めなかった場合は違約金15億ドルをモンサントに支払う◇買収資金についてはバンクオブアメリカなど5行から協調融資を受ける契約が調印待ちの状態になっている――ことを明らかにした。
バイエルは、同社とモンサントは製品分野、地域市場で重複が少なく、買収計画が却下されることはないと強調。15億ユーロの違約金支払いを確約するのは却下の可能性がないとみているためだと説明した。
一方、ブルームバーグが消息筋の情報として13日伝えたところによると、モンサントは事業規模の拡大に向けて様々な取引の可能性を模索しており、BASFの農業化学事業買収がその1つとして浮上している。BASFから農業化学事業を取得し、その見返りに自社の新株を提供するという内容。交渉は初期段階にあり、実現するかは定かでない。モンサントとBASFは報道内容へのコメントをともに控えている。
フランクフルター・アルゲマイネ紙によると、モンサントはスイス同業のシンジェンタ買収も視野に入れているもようだ。