欧州委が反ダンピング制度見直しに着手、中国「市場経済国」認定は拒否

欧州委員会は20日、世界貿易機関(WTO)の規定により中国が「市場経済国」として認定された場合に備え、ダンピング(不当廉売)対抗措置の強化に向けた新制度を導入する方針を明らかにした。現状では中国を市場経済国として認定することはできないとの見解を示す一方、「非市場経済国」としての地位が失効する12月以降も認定を拒否した場合、中国側が世界貿易機関(WTO)の協定違反で提訴する構えをみせていることから、市場経済国かどうかに関わらず、ダンピングなどへの対抗措置を講じることができるよう「新たなアプローチ」を模索すると説明している。今後具体策を詰め、年内に必要な法改正を加盟国と欧州議会に提案する。

中国は2001年にWTOに加盟した際の議定書で、加盟から15年間は非市場経済国として扱われることを受け入れた。この規定が12月11日付で失効するため、中国政府はその後は自動的に市場経済国に移行すると主張している。しかし、市場経済国に認定した場合、中国からの安価な輸入品に対して反ダンピング措置などを講じることが困難になり、自国の製造業者はより一層厳しい競争にさらされることになる。このためEU、米国、日本などは認定の可否を改めて判断する方針で、これに対して中国が反発を強めている。

欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は記者会見で、「中国は市場経済国としての基準を満たしていない。市場経済国として認定できれば何も問題はないのだが、実際にはそうではない」と指摘。そのうえで、「重要なのはダンピングや違法な輸出補助金などによって域内の企業が不利益を被ることがないようにすることで、中国を非市場経済国として名指しすることが目的ではない」と強調。市場経済国かどうかによって反ダンピング措置などの対応が決まる現在のシステムを改め、中国に限らずすべてのWTO加盟国を対象に、国際価格を基準にダンピングかどうかを判断する仕組みを導入する方向で検討を進めていることを明らかにした。

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