ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ、本社ベルギー)は7月26日、買収で合意している同2位の英SABミラーの買収価格を引き上げると発表した。英国のEU離脱決定でポンドが下落し、SABミラーの株主にとって不利となっていることに応じたもので、1株当たりの買い取り価格を44ポンドから45ポンドに増額。買収総額は710億ポンドから790億ポンドに拡大する。SABミラーは29日、新たな買収案を支持する意向を表明した。
インベブは昨年11月、SABミラーを買収することで合意。EU、米国当局に加えて、29日に中国当局の承認を受けるなど、買収手続きが進んでいる。ところが、英国のEU離脱が国民投票で決まってからポンドが急落。米ドル建ての買収額が1,060億ドルから約1,000億ドルに低下したことから、SABミラーの株主から不満の声が挙がっていた。
インベブはSABミラーの一部の大株主に限って、現金と株式交換を組み合わせた形で持ち株を取得することにしている。これらの株主はポンドが下落したものの、受け取るインベブ株式の株価が上昇したため、1株当たりの買収価格は合意時を14.2%上回る50.26%となる。今回の買収条件引き上げは、全額が現金で支払われる他の株主に配慮したものだ。
ただ、新条件でも現金・株式交換組み合わせ方式の買い取り価格が1株当たり51.14ポンドと、全額現金方式を13.6%上回る。このため、SABミラーの株式1.17%を保有する少数株主のアバディーン・アセット・マネジメントは「新提案を受け入れることはできない」と反発したが、SABミラーは新提案を支持し、株主に受け入れるよう勧告することを決めた。