英政府は2日、閣内に「経済・産業戦略委員会」を設置し、英国経済の活性化に向けて取るべき戦略の策定に着手した。EUからの離脱決定を受けて景気後退の懸念が高まるなか、メイ首相と主要閣僚は英国全体で生産性を高め、地域間格差を是正することが最重要課題との認識で一致。また、引き続き自由貿易を推進し、海外からの投資を積極的に受け入れる方針も確認した。
戦略委員会のメンバー構成は、メイ首相とハモンド財務相、クラーク民間企業・エネルギー・産業戦略相など11人の閣僚。首相報道官は初会合終了後、いかにして生産性の向上を図るかが新政権が取り組むべき政策の柱になると強調。各地の実情に合わせて支援策を講じ、地域間格差を是正して経済成長を促す必要があると指摘した。報道官によると、ハモンド財務相は会合で、ロンドンおよびイングランド南東部とその他の地域における生産性の格差を半減させた場合、国内総生産(GDP)を9%押し上げることができると説明した。
閣僚らはまた、高い技能を持つ人材への投資や、英国の強みを生かしながら、「将来の生活スタイルを方向づけるような」新たな産業に対して「開かれた経済圏」を構築することが重要との認識でも一致した。
一方、戦略委は海外からの投資受け入れも産業戦略の重要な柱と位置づけたが、先にメイ首相が再検討を表明した新規原子力発電所の建設計画については言及していない。同計画は英南西部サマセット州のヒンクリーポイントに原子炉2基を新設するプロジェクトで、総事業費およそ180億ポンドの3分の2を仏電力公社(EDF)、残りを中国国有企業の中国広核集団が出資するというもの。昨秋にキャメロン前首相と習近平国家主席が合意した原子力協力の目玉の1つだが、メイ首相はEDFが投資計画を正式承認した先月28日、「再検証の時間が必要」として承認を先送りした。英政府は引き続き中国との関係強化を図る方針を強調しているが、メイ氏は以前から中国企業の対英投資に慎重だったとされ、今後、前政権が推し進めた親中政策の見直しが進む可能性もある。