トルコの加盟交渉「打ち切り」、オーストリア首相が提案へ

オーストリアのケルン首相は3日、トルコ政府が先月のクーデター未遂後に大規模な粛清やメディア弾圧を進めていることを踏まえ、同国のEU加盟交渉を打ち切るべきだとの考えを示した。9月中旬のEU首脳会議で交渉中止を提案する考え。欧州委員会のユンケル委員長はこれに対し、EUから一方的に交渉を打ち切るのは「得策ではない」と慎重な姿勢をみせているが、EU内では強権的な統治手法を強めるエルドアン政権に対する懸念が広がっている。トルコとの間で緊張が高まれば、難民危機への対応をめぐる協力関係に影響が及ぶ可能性もある。

ケルン首相はオーストリア国営放送(ORF)とのインタビューで、「トルコの民主主義の水準はEU加盟の基準をまったく満たしておらず、経済面でも欧州の平均的な水準からほど遠い位置にある」と指摘。また、4日付の地元紙「ディー・プレッセ」とのインタビューでは「われわれは現実に目を向けなければならない。トルコのEU加盟交渉はもはやフィクションでしかない」と強調。ただし、トルコは安全保障や難民対策などでEUの「重要なパートナー」とも述べ、加盟交渉とは切り離してトルコとの協力関係を維持する必要があるとの考えを示した。

欧州委のユンケル委員長は4日、独公共放送ARDの取材に対し、「現状ではトルコはEUに加盟することはできない」と強調し、EU側から一方的に交渉を打ち切るのは逆効果だと指摘。ケルン首相の発言をけん制したうえで、トルコ政府が死刑制度の復活を検討している点に触れ、「再導入された場合は加盟交渉を打ち切ることになる」と警告した。

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