加盟国がパリ協定の早期批准で合意、来月のCOP22で発効へ

EU加盟国は9月30日に開いた臨時環境相理事会で、2020年以降の国際的な地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」の早期批准に合意した。通常の手続きでは全ての加盟国が批准した後にEUが批准する必要があるが、現時点で国内手続きを終えたのはフランスやドイツなど6カ国にとどまるため、EUとしての批准を優先する特例措置を取る。10月3~6日の欧州議会で承認を得た上で、国連に批准書を提出する。EUの批准でパリ協定は発効に必要な条件を満たし、11月7日からモロッコのマラケシュで開催される国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)での協定発効が確実な情勢となった。

パリ協定は京都議定書に続く温暖化対策の新たな枠組みで、昨年12月にパリで開かれたCOP21で採択された。先進国だけに温室効果ガスの削減を義務付けた京都議定書と異なり、発展途上国を含むすべての国が参加する。産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることを目標に掲げており、協定締結国は温室効果ガス削減目標を5年ごとに国連に提出し、目標達成に向けた対策を取ることが義務付けられる。

EUでこれまでに国内手続きを終えたのはフランス、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、スロバキア、マルタの6カ国。当初、EUとしての批准は17年になるとみられていたが、9月3日に2大排出国の米国と中国が同時に批准を発表し、年内発効の可能性が出てきたことで、加盟国は今後もEUが主導権を維持するには年内批准が不可欠との認識で一致した。

協定発効の条件は、55カ国以上の批准と、批准国の温室効果ガス排出量が世界全体の総排出量の55%に達すること。これらの条件を満たせば30日後に発効する。国連気候変動枠組条約事務局によると、9月29日までに批准書を提出した国は61カ国で、世界の総排出量に占める割合は47.79%。EUは世界の排出量の約12%を占めるが、このうちすでに批准手続きを終えた6カ国の排出量は4.39%。さらに今月2日、世界4位の排出国で4.1%を排出するインドが批准書を提出したほか、カナダ(1.95%)も近く批准する方針で、COP22までに総排出量も協定発効の条件を満たす見通しだ。

今回の環境相会議では、各国が自国での批准手続きを急ぐことでも合意した。ただ、今後は欧州委員会が各国に割り当てる排出量の削減幅などをめぐり、石炭による火力発電への依存度が高いポーランドなどからの反発が予想され、EU内の新たな火種になる可能性も指摘されている。

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