EU-ETS対象施設の温効ガス0.7%減、累積余剰排出枠は17%縮小

欧州環境庁(EEA)が17日公表したリポートによると、EU排出量取引制度(EU-ETS)の対象となっている域内の事業所や発電所から排出された温室効果ガスは、2015年に前年の水準を0.7%下回り、05年に比べて24%減となった。一方、排出権価格を下支えする目的で14年から導入されたバックローディング(排出枠の入札延期措置)などの施策により、累積余剰排出枠は17%縮小し、08年以降で初めて大幅な減少を記録した。

EEAは欧州委員会とEU加盟国から入手したデータをもとに、「EU-ETSの動向と2016年の予測」と題したリポートをまとめた。それによると、EU-ETS対象施設からの温室効果ガス排出量は引き続き減少傾向が続くものの、発電部門で化石燃料から再生可能エネルギーへの移行が進んだ05年からの10年間に比べ、削減のペースは全体として鈍化すると予測。EU加盟国のちフランス、イタリア、スペイン、ハンガリー、スロバキア、ルーマニアなど13カ国では30年にかけて対象施設からの温室効果ガス排出量が増加するとの見方を示している。

一方、EU-ETSでは排出枠の無償割当を段階的に減らし、27年までにオークションによる有償割当に全面移行することが決まっているが、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞した結果、排出枠が大量に余って供給過剰となり、余剰排出枠は14年までに08年からの累計が二酸化炭素(CO2)換算で21億トンまで拡大した。しかし、バックローディングが導入された同年は余剰排出枠の累計が前年を約3,000万トン下回り、15年はさらに3億トン縮小した。

ただ、余剰排出枠は依然として高い水準にあり、排出権価格の低迷が続いている。EUは排出権価格を一定の水準に維持して低炭素技術への投資を促進するため、19年から「市場安定化準備制度(MSR)」の導入を計画している。これは余剰排出枠を一旦リザーブしておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組みで、14~16年に有償配分する排出枠のうち、バックローディングによって19年以降に入札が延期される9億トン分などがMSRに組み込まれることになっている。

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