伊など6カ国が財政規律違反の恐れ、欧州委が警告

欧州委員会は16日、ユーロ参加国の2017年度予算案の審査結果を公表した。これによると、EUの財政規律を完全に順守するのはドイツなど5カ国だけ。イタリアなど6カ国については、規律違反の恐れがあると警告している。

EUの財政規律を定めた安定成長協定では、各国は単年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内、累積債務をGDP比60%以内に抑えることを義務付けられている。

欧州委によると、17年度に規律を完全に順守できるのはドイツ、オランダ、ルクセンブルク、スロバキア、エストニアの5カ国。このほかオーストリア、アイルランド、ラトビア、マルタは概ね順守できると評価した。

一方、違反するか、違反のリスクがあるとされたのはイタリア、ベルギー、フィンランド、キプロス、リトアニア、スロベニアの6カ国。すでに規律に違反し、過剰赤字是正手続きを発動されている3カ国に関しては、フランスは赤字がGDP比3%を下回り、違反が解消されるとしたものの、スペインとポルトガルについては違反の恐れがあると指摘した。

EUはギリシャに端を発した債務危機の再発を防止するため、ユーロ参加国の財政監視強化策として、各国の予算案を欧州委が事前に審査する制度を2013年に開始。各国は次年度予算案を議会の承認に先立って毎年10月15日までに欧州委に提出し、審査を受けることが求められる。欧州委は予算案が財政規律に反すると判断した場合、修正を求めることができる。今回の審査は、債務危機でEUから金融支援を受け、財政規律とは別の枠組みで財政再建を求められているギリシャ除く18カ国が対象となった。

規律に違反したユーロ参加国は過剰赤字是正手続きを適用され、是正を怠れば制裁措置を受ける可能性がある。スペインとポルトガルはEU補助金の一部の交付を凍結される可能性があったが、欧州委は両国が必要な是正措置を進めているとして、実施を見送る方針を打ち出した。

また、モスコビシ委員(経済・財務・税制担当)はイタリアの財政悪化に関して、地震発生と難民流入が財政を圧迫しているとして、一定の理解を示した。

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