30年までに消費電力の半分を再可エネに、欧州委が政策発表

欧州委員会は11月30日、クリーンエネルギーへの移行を推進し、再生可能エネルギー分野でEUが競争力を維持するための政策パッケージを発表した。2030年までにEU域内における電力消費量の半分を再生可能エネルギーで賄うことや、エネルギー効率の改善により同年に域内で消費される総エネルギー量を30%削減することなどを柱とする内容。欧州議会と閣僚理事会で欧州委の提案について検討するが、石炭火力発電に依存するポーランドは早くもいくつかの政策に反対を表明しており、協議は難航が予想される。

欧州委は「全欧州市民のためのクリーンエネルギー」と題する政策案で、エネルギー効率の改善を最優先課題として取り組むと同時に、EUが再生可能エネルギー分野で主導権を維持する必要があると指摘。EUは21年以降、地球温暖化対策に官民合わせて年間最大1,770億ユーロの資金を投入することで、今後10年で域内総生産(GDP)を最大1%押し上げ、90万人の雇用を創出できると分析している。

エネルギー効率に関しては、ロシアから輸入される化石燃料への依存度を減らすため、30年を達成期限とする拘束力のある目標を設定。建物の改装によって建造物によるエネルギー消費を削減するなどして、エネルギー使用料の30%削減を実現する。ただ、欧州議会は30年までに40%の削減を求めており、環境団体などからは目標が「緩やかすぎる」との批判が出ている。

一方、電力供給力が必要な場合に確実に発電できる状態を確保するとの名目で広く採用されている「容量メカニズム」(実際に発電したかどうかにかかわらず、発電能力=容量に応じた容量価格が支払われる制度)に関しては、電力会社に対する「裏口からの補助金」として活用されることがあってはならないと指摘。新規の発電所については1キロワット時あたりの二酸化炭素(CO2)排出量が550グラムを超えた場合、容量メカニズムを適用しない方針を打ち出した。ただし移行措置として、既存施設については上限を超えていても26年まで同メカニズムが適用される。

欧州委はこのほか、EU域内では電力の卸売価格が下落傾向にあるものの、電気料金は2008年以降、年3%のペースで上昇していると指摘。市場価格が需給バランスに連動する状態が確保されるよう、引き続き各国政府に料金規制の見直しを求めていく方針を示している。

上部へスクロール