英国のデービスEU離脱担当相は1日、離脱後もEU単一市場にアクセスできるようにするため、EU予算への拠出を続ける用意があることを明らかにした。英国の現政権の閣僚がこのような譲歩の姿勢を示し、単一市場残留を模索する方針を打ち出したのは初めて。市場では英の「ソフトブレグジット(穏健な離脱)」が実現するとの期待が高まり、同日に通貨ポンドが対ドル、ユーロで急騰した。
英国でEU離脱が国民投票で決まってから発足したメイ政権は、単一市場へのアクセス維持を目指しながらも、EUからの移民を制限することを優先する姿勢を示してきた。これに対してEU側は、英の単一市場残留は域内の人の自由な移動の確保が絶対条件としているため、単一市場残留を望む国内の金融業界などで「ハードブレグジット(強硬離脱)」の懸念が強まっていた。
EU予算への拠出継続は、デービス離脱担当相が議会の答弁で言及したもの。単一市場にとどまるため、何らかの形でEU予算に拠出することを検討するかという野党議員の質問に対して、モノ・サービスがEU市場に最大限にアクセスできるようにするために必要であれば「もちろん検討する」と述べた。
同相の発言は、英政府が移民制限で強硬姿勢を貫く代わりに、EUに予算で貢献することで単一市場残留を取り付けるという戦術を念頭に置いていることを明らかにした格好。これが実現すると、ノルウェー、スイスなどと同様の形でEU単一市場へのアクセスを確保することになる。英政府内では同日、ハモンド財務相が「何らかの形でEU予算に貢献する可能性を排除しなかったデービス氏は正しい」と述べ、同方針を支持した。
ただ、移民制限に強く反対するEU側が、予算での譲歩だけで単一市場残留を認めるかどうかは微妙なところ。また、EU離脱の是非を問う国民投票に際して、離脱派はEU予算の多くを英国が負担していることを批判し、離脱すれば税金のすべてを英国のために投入できると主張していた。メイ首相の報道官は「これまで政府は(EU離脱後に)税金をどのように使うかは英政府が決めると言ってきた。デービス氏の発言内容はこれに合致する」と述べたが、整合性の問題があるのは否めず、国内で反発の動きが出るのは必至とみられる。