EU加盟国は3日開いた産業担当相会合で、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際に発生するローミング料金について協議し、事業者が他社の回線を使用するために支払うホールセール料金に上限を設ける新たな規制案の内容で基本合意した。11月30日には欧州議会産業委員会もホールセール料金に関する規制案を採択しているが、データ通信の上限が加盟国間の合意と大きく食い違っている。このためEU議長国スロバキアが欧州議会との交渉にあたり、2017年6月の新ルール導入に向けて3月までの合意を目指す。
EUでは2017年6月に国際ローミング料金が廃止されることになっており、EU市民は域内のどこに移動しても、自国と同じ料金水準で通話やデータ通信などのサービスを利用できるようになる。ただ、ホールセール段階の料金を据え置いたままローミング課金を撤廃した場合、事業者の収益が圧迫されるため、損失を補てんするため国内料金を引き上げたり、廃業に追い込まれるケースも予想される。このため欧州委員会は6月、国際ローミングのホールセール料金に上限を設ける規制案を打ち出し、加盟国の間で検討が進められていた。
国際ローミングのホールセール料金は現在、通話時が1分当たり平均0.05ユーロ、テキストメッセージが1件当たり0.02ユーロ、データ通信は1メガバイト当たり0.05ユーロとなっている。欧州委の提案は、来年6月から通話時のローミング料金を1分当たり最大0.04ユーロに制限するほか、テキストメッセージは1件当たり0.01ユーロ、データ通信は1メガバイト当たり0.0085ユーロ以下に抑えるよう事業者に義務付けるという内容。
これに対し、欧州議会産業委では通話時のローミング料金を1分当たり0.03ユーロに制限するほか、データ通信については上限を1メガバイト当たり0.004ユーロから段階的に0.001ユーロまで引き下げる修正案が採択された。一方、加盟国はデータ通信の上限を来年6月以降は1メガバイト当たり0.01ユーロとし、21年6月以降は0.005ユーロに引き下げる案を承認している。