EU加盟国、反ダンピング規則改正案を承認

EU加盟国は13日開いた大使級会合で、不公平な貿易競争から域内産業を保護することを目的とした反ダンピング(不当廉売)規則の改正案を承認した。中国製の安価な鉄鋼製品などが大量に流入している現状に対応するため、不当な輸出補助などによって国内価格を大幅に下回る価格でEU市場に輸出された製品に対し、より厳しい反ダンピング関税措置を講じることができるようにする。閣僚理事会の正式な承認と欧州議会の採択を経て新ルールを導入する。

EUでは輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が輸入国の国内産業に損害を与えていると欧州委員会が認定した場合、割増関税を課す反ダンピング関税制度を導入している。世界貿易機関(WTO)の協定により、国内価格と輸出価格の差額(ダンピングマージン)の範囲内で反ダンピング関税の税率を設定することが認められているが、EU規則ではダンピングマージンと域内企業の損害を除去するに足る課税水準のうち、より低い税率に抑えるルール(lesser duty rule)が採用されているため、実際の課税率はダンピングマージンに基づく計算上の課税率より低くなることが多い。たとえば中国製の冷間圧延鋼の場合、ダンピングマージンが50%を超えているのに対し、域内企業の損害を基にした実際の課税率は約20%に設定されている(同一製品に対する米国の関税率は200%超)。

欧州委はこうした現行ルールを改正し、輸出国による不公正な補助金などによって「原材料費やエネルギー価格」に「歪み」が生じている場合、ダンピングマージンに基づく課税率を適用できるようにすることを提案していた。しかし、自由貿易を推進する立場の英国などが強く反対したため、EU議長国スロバキアが妥協案として、問題となる原材料費の総額が製造コストの27%以上を占め、かつ個別の原材料費が同7%以上を占める場合、反ダンピング関税の税率を引き上げることができる制度の導入を提案。大使級会合で特定多数決により同案が承認された。

改正案にはこのほか◇ダンピングの疑いがある場合、欧州委は域内の企業や業界団体からの申し立てがなくても調査を開始できるようにする◇欧州委が暫定的に反ダンピング税の賦課を決定するまでの期間を現在の最大9カ月から大幅に短縮する――などが盛り込まれている。

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