ホルモン牛肉めぐる対立が再燃、米当局が報復関税再導入へ

EUが成長促進の目的で肥育ホルモン剤を使用した米国産牛肉の輸入を禁止している問題で、米通商代表部(USTR)は12月22日、EU産品に対する報復関税を復活させるための手続きを開始したと発表した。欧州委員会はEU・米間の環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉で米国産牛肉をめぐる紛争について協議すべきだと主張していたが、昨年9月の時点でTTIPの年内合意が不可能になったことを受け、米畜産業界からEUへの対抗措置を求める声が上がっていた。米政府は2月半ばに公聴会を開いて利害関係者や専門家らの意見を聞き、報復関税を再導入すべきか判断する。

肥育ホルモンを使用した牛肉をめぐるEUと米国の紛争は1990年代に遡る。世界貿易機関(WTO)は98年2月、発がん性などを理由とするEUの禁輸措置は科学的なリスク評価に基づくものではないとする米側の主張を認め、米国がEUに対して制裁措置を講じることを認める裁定を下した。これを受けて米政府はロックフォール・チーズ、トリュフ、フォアグラ、ディジョン・マスタードなどに100%の報復関税を課した。一方、EUは2003年9月に肥育ホルモンの使用規制を強化する新指令を採択。ホルモン牛肉の禁輸措置は新指令に基づく正当な措置だと主張し、WTOに米国を逆提訴した。

WTO上級委員会は08年、EUによる禁輸措置の妥当性を判断するには科学的なデータを基にさらに詳しく検証する必要があると結論づける一方、米国による制裁措置は禁輸への対抗策として正当化できるとの見解を示した。これを受けてEUと米国は09年5月、EUがホルモン剤を使用しない牛肉の無関税枠を段階的に拡大する一方、米側はEU産品に対する報復関税を段階的に廃止することで暫定合意した。しかし、牛肉の無関税枠は対象国を米国に限定したものではなかったため、第3国からの輸入が増えたことで米国産のシェアは縮小傾向にあり、米側は不満を募らせていた。

USTRのフロマン代表は声明で「ホルモン剤を投与した米国産牛肉の禁輸措置は国際的な貿易ルールに違反しているとWTOが判断したにも拘わらず、EUはこの問題への対応を怠っている。米国の食肉生産者がEU市場にアクセスできるようにするため、欧州委に再交渉を促すのが今回の措置の狙いだ」と説明。ビルサック農務長官は「米国の畜産業者は地球上で最高の牛肉を生産しているにも拘わらず、EUの政策は域内の消費者が手頃な価格で米国産牛肉を購入するのを妨げている」と指摘した。

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