EU主要国のドイツ、フランス、イタリア、スペインは6日、仏ベルサイユ宮殿で非公式首脳会議を開き、EUの将来像について協議した。欧州委員会のユンケル委員長が先ごろ、EU統合のあり方に関する白書を発表したことを受けたもの。4カ国は白書が提示した選択肢のうち、統合のスピードを多様化するため一部の加盟国が特定分野で他の国に先行して統合を進める「先行統合」を支持することで一致した。
EUでは加盟国の一部が賛同すれば、それらの国だけで先行して統合を進めることが認められている。19カ国による単一通貨ユーロの導入が代表例だ。
ユンケル委員長は1日、英国が離脱した後のEUの結束維持に向け、EUの将来像に関する白書を発表。どのような形での統合深化を進めていくかについて、先行統合を特定の分野で積極的に推進していくことや、現状維持、単一市場に絞って統合を深化させるなど5つのシナリオを提示していた。
ユンケル委員長は5つの選択肢に優先順位をつけていないが、主要国ではドイツ、フランスが柔軟に統合を進めるため、以前から先行統合の活用を支持していた。今回の首脳会議でも、独仏は「一部の国が迅速に(統合を)進めることを受け入れる勇気が必要だ」(独メルケル首相)、「結束は一律性を意味するものではない」(仏オランド大統領)として、同案支持を表明。イタリアのジェンティローニ首相、スペインのラホイ首相も同調した。
離脱を決めた英国を除くEU27カ国は、EUの前身である欧州経済共同体(EEC)を設立する条約(ローマ条約)の締結60周年に合わせて3月25日にローマで開く首脳会議で、今後の方向性を示す「ローマ宣言」を採択する予定。主要国が先行統合支持を打ち出したことで、同案を軸に宣言の内容を調整していくとみられる。
ローマ宣言は、英国の離脱決定で揺れるEUの求心力回復が目的。先行統合の推進には、欧州統合の歩みを停滞させないという意図がある。西欧の主要国が中心となってさらなる統合を進め、他の国も準備が整えば追随するという考え方だ。
ただ、同案には中東欧諸国の間で、主要国に置き去りにされかねないとして警戒感が根強い。27カ国が10日に開いた非公式首脳会合では、ユンケル委員長が「東西に新たな鉄のカーテンを設けるようなものだという声があるが、そのような意図はない」と説明。主要国からも「すでに欧州では異なるスピードで統合が進んでいる。どの加盟国も参加は自由だ」(独メルケル首相)、「誰かを排除するものではない。望む者が先行するだけで、誰にも誰も締め出させない」と賛同の声が相次いだ。
しかし、ポーランドのシドゥウォ首相は「多様なスピード(での欧州統合)について語ることは受け入れられない」と反発しており、曲折が予想される。