EUと東南アジア諸国連合(ASEAN)は10日、フィリピンの首都マニラ南部パサイ市で欧州委員会の通商担当委員とASEAN10カ国の経済相による定期会合を開き、地域間の自由貿易協定(FTA)締結を目指して中断している交渉を再開する方針で合意した。双方は保護主義を排斥し、自由で公正な共通ルールに基づく貿易体制を確立することがEUとASEANの経済成長につながるとの認識で一致。早期の交渉再開に向けて枠組み構築を急ぐ方針を確認した。
EUとASEANは2007年に地域間のFTA締結を目指して交渉を開始した。しかし、ASEAN諸国では経済規模や政治体制が国によって大きく異なるため、EUとの間で共通の貿易ルールを策定することが困難なことや、軍政の続くミャンマーでの人権侵害などが障害となり、09年に交渉を中断。EUはその後、ASEAN加盟国との個別交渉に方針転換し、これまでにシンガポールおよびベトナムとのFTAが最終合意に達したほか、現在はマレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンと交渉を進めている。
欧州委のマルムストロム委員(通商担当)は会議後の会見で「世界的に保護主義と反グローバル化が広がりをみせている。国境を閉鎖して壁を造り、関税を引き上げても事態は好転せず、かえって問題が深刻化するだけだ」と指摘。「EUとASEANの長年の目標である地域間FTAの実現に向けて前進しなければならない」と強調した。