ハンガリー原発拡張計画、欧州委が政府の支援策を承認

欧州委員会は6日、ハンガリーが計画している原子力発電所の拡張事業に対する支援策を承認したと発表した。競争入札を経ずにロシアの国営企業が原子炉の増設工事を受注した点を問題視し、公共調達と国家補助ルールの観点から調査を進めていたが、ハンガリー政府が打ち出した一連の措置により、同国のエネルギー市場で競争が阻害される恐れはないと判断した。

問題となっていたのはハンガリー唯一の原発で、首都ブダペストの南約100kmに位置するパクシュ原子力発電所。1980年代に建設された4基のロシア型加圧水型原子炉(VVER)が国内における総発電量の約50%を供給しているが、いずれも運転期間が満了しつつある。このためハンガリー政府は新たに原子炉2基(パクシュⅡ)の建設を決定。2014年1月に行われたロシアとの首脳会議で、露国営原子力企業ロスアトムに原子炉の増設工事を委託し、ロシア側は建設費の過半を占める最大100億ユーロの借款を供与することで合意した。

欧州委はハンガリー政府が入札を実施せず、直接ロスアトムを指名した点を問題視し、公共調達に関するEUルールに抵触するとして、15年11月に同国に対する違反手続きを開始。続いてハンガリー政府が計画している低利融資を通じた支援策についても本格調査に着手した。公共調達ルールとの関連では、プロジェクトに必要な技術要件を満たしていたのはロスアトムだけだった点や、ロスアトムと契約を結ぶ前の段階で欧州委のバローゾ前委員長から承諾を得ていたとするハンガリー側の主張が認められ、昨年11月に調査が打ち切られた。

欧州委によると、ハンガリー政府はプロジェクトに対する資金支援が公正な競争を損なう恐れがあるとの懸念に対応するため、パクシュ原発を運営する国営電力会社MVMから切り離してパクシュⅡを運営すると共に、パクシュⅡが生み出す利益はすべて政府への返済と運転資金に充て、発電設備を拡充するための再投資は行わないことを確約。さらにエネルギー市場の流動性を確保するため、パクシュⅡの総発電量のうち少なくとも30%を公開市場で販売し、残りは入札方式で売却するシステムを構築することを提案した。

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