英国のメイ首相は18日、2020年5月までに行う予定だった総選挙を6月8日に実施する意向を表明した。安定した政権基盤を築いてからEUとの離脱交渉に臨む狙いがある。総選挙の前倒しは予想外。首相は与党が高い支持を得ていることを背景に、実施に踏み切った。
英議会は19日、総選挙の前倒しを賛成多数で承認した。これよって下院を解散し、6月8日に選挙を実施することが正式に決まった。
メイ氏は昨年6月、国民投票でEU離脱が決まった直後にキャメロン首相(当時)が辞任したことを受けて、新首相に就任した。このため、国民の信任は得ていない。難航が予想されるEU離脱交渉では、自身への信任を取り付けて政権基盤を固め、交渉力を強化する必要があると判断し、総選挙の前倒し実施を決めた。
与党・保守党の下院(定数650)の議席は、過半数をわずかに上回る330議席。議会ではEU離脱をめぐり、野党は離脱そのものには反対していないものの、EU単一市場からの離脱を視野に入れた「ハード・ブレグジット(強行離脱)」も辞さないという政権の方針には反発しており、一枚岩には程遠い状況にある。メイ首相は総選挙の早期実施を否定していたが、こうした野党の姿勢が離脱交渉で弱みになると批判。交渉方針について国民の支持を取り付けるため、総選挙の前倒しを決断したと説明した。
英政府は3月29日、EUに離脱を正式通告した。英国を除く加盟27カ国は29日に開く特別首脳会議で離脱交渉の基本方針を決める予定で、6月中にも離脱交渉が開始される見込みだ。英の総選挙は交渉開始に先立って実施される形となる。
メイ首相が総選挙に踏み切った背景には、英経済がEU離脱決定後も堅調を維持していることなどで、政権が高い支持を得ていることがある。総選挙実施の発表直後に英ガーディアン紙が調査会社ICMと共同で実施した世論調査によると、保守党の支持率は46%で、最大野党・労働党の25%を大きく上回った。メイ首相の支持率も50%に達し、10%台に低迷する労働党のコービン党首を大きく引き離している。
このため18日の外国為替市場では、総選挙での与党の勝利が確実との見方が広がり、英ポンドは対ドルで4カ月ぶりの高値に上昇した。