トルコ問題めぐりEU内で不協和音、当面は「加盟交渉の扉閉ざさず」

EU加盟国は4月28日、マルタの首都バレッタで外相会議を開き、トルコのEU加盟問題について協議した。トルコでは大統領権限の強化を柱とする憲法改正の是非を問う国民投票に勝利したことを受け、エルドアン大統領が死刑制度の復活やEU加盟交渉継続の是非を問う国民投票を実施する可能性を示唆している。このためEU内では加盟交渉の停止を求める強硬論も出ているが、外相会議ではEUとして交渉の扉は閉ざさず、トルコ側が加盟意思の有無を明確にすべきだとの意見が多数派を占めた。

EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は会議終了後、「引き続き加盟候補国としてEUと交渉を継続したいかどうか、トルコ側が立場をはっきりする必要がある」と指摘。少数派の権利擁護や死刑制度の廃止など、民主主義国家の連合体である「EUのルールは明確だ」と強調し、EUが求める要件を満たせば「喜んで受け入れる用意がある」と述べた。

これに対し、対トルコ強硬派オーストリアのクルツ外相は、改憲によって大統領が強大な権力を握る一方、国会の権限や司法の独立性が脅かされると警告し、エルドアン政権は「越えてはならない一線を越えた」と強調。トルコは民主主義国家の集まりであるEUの基本的な価値を共有することはできないと指摘し、「トルコと接触することは問題ないが、EUのメンバーとして迎えることはノーだ」と述べた。

トルコのEU加盟交渉は2005年10月にスタートしたが、EU側はトルコ国内の少数民族クルド人に対する人権抑圧などを問題視し、交渉は長く足踏み状態が続いていた。EUは昨年3月、ギリシャに密航した不法移民らをトルコに強制送還する見返りとして、EU加盟交渉を加速させることを約束。新たに経済通貨政策などの分野で協議入りし、35の交渉分野のうち、交渉入りしたのは16分野となった(交渉完了は1分野のみ)。

しかし、昨年7月の軍の一部勢力によるクーデター未遂事件をきっかけに、エルドアン政権は強権政治を加速させている。クーデターの黒幕とされる在米イスラム教指導者ギュレン師の支持勢力に対する弾圧だけでなく、13万人以上の軍人や公務員を解雇し、反対意見を持つ学者やジャーナリストらを追放した。さらに、EUは死刑制度を再導入した場合は加盟交渉を打ち切るとくり返し警告しているが、エルドアン大統領は国民投票で賛成派が過半数を占めたことを受け、死刑制度の復活に前向きな姿勢を示している。

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