欧州委員会は4月25日、EU全体でワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現するための具体策を盛り込んだ指令案を発表した。グローバル化やデジタル化に伴う労働環境や社会全般の変化に対応し、公正な労働条件や適正な福祉制度を支えるための20の主要原則から成る「欧州の社会的権利に関する柱」の一環として策定されたもので、欧州委は子供の出生時における父親の休暇や介護休暇などに関する共通ルールの導入を提案している。
EUでは労働市場へのアクセスの平等や雇用における男女の均等な機会と待遇を確保するため、さまざまな対策が講じられているが、欧州委がまとめた2015年の統計によると、女性の就業率はEU平均で男性より11.6%低く、6歳以下の子供がいる世帯では男女格差が30%と大きくなっている。また、男女間の賃金格差も16.3%と引き続き高い水準にあり、年金受給額に至っては40%の開きがある。欧州委は依然として女性が育児や介護などの負担の大部分を担っていることが背景にあると指摘し、こうした現状を改善することがワーク・ライフ・バランス指令の目的だと説明している。
指令案によると、子供の出生時にすべての父親は10日間の有給休暇を取得でき、病気休暇と同水準の賃金が保証される。すでに多くの加盟国で出生時の「父親休暇」が認められているが、期間にはばらつきがあり、有給休暇の規定がない国もある。
介護休暇も現在は国によって扱いが大きく異なるが、欧州委は重い病気の家族や扶養家族を持つすべての就労者が年間5日の有給休暇を取得できるようにすることを提案している。
このほか12歳以下の子供や高齢者などの扶養家族を持つ就労者に対し、勤務時間の短縮や変更を求めたり、勤務地を選ぶ権利を与えることも指令案に盛り込まれている。