欧州議会の文化・教育委員会は4月25日、2010年に制定された「視聴覚メディアサービス指令」の改正案を可決した。子供を有害なコンテンツから保護するため、動画配信事業者に対する規制を強化することなどを柱とする内容。改正案は5月15日の本会議で採決が行われる見通しだ。
改正案によると、ユーチューブなどの動画共有プラットフォームは、暴力や憎悪をあおったり、テロや暴動を扇動するような動画から子供を守るための対策を講じなければならない。具体的にはユーザーが簡単な手順で有害コンテンツを報告できるシステムを導入し、報告を受けてどのような措置を講じたかレポートすることが義務付けられる。
一方、EUではすでにたばこ製品のテレビ広告が禁止されている。改正案は子供向けのテレビ番組について、電子たばこを含むすべてのたばこ製品とアルコール類の広告を全面禁止すると共に、喫煙や飲酒シーンなどの形で製品を番組に登場させるプロダクトプレースメントも禁止し、動画配信プラットフォームにも同様の規制を適用することを提案している。
さらに、動画配信事業者は放送事業者と同様、欧州で制作されたコンテンツの枠を確保することが義務付けられる。現行指令は文化の多様性を保護する目的から、欧州で制作されたテレビ番組や映画を全体の20%以上とすることを域内の放送事業者に義務付けている。欧州委員会はオンデマンド動画配信にもテレビ放送と同様のルールを適用することを提案していたが、文化・教育委ではさらに一歩進め、欧州で制作されたコンテンツの比率を30%以上とする修正案が承認された。
一方、改正案にはテレビ広告に関する規制を一部緩和する措置も盛り込まれている。動画配信サービスの普及を背景に、多くのテレビ局が収益悪化に直面している現状を考慮したもので、コマーシャル(CM)の放送分数を全体の20%以下に抑えるルールは維持する一方、1時間当たりのCM放送分数を最大12分に制限する規制は廃止するという内容。これにより、テレビ局はより柔軟に広告枠を設定できるようになる。