欧州議会は18日の本会議で、EU市民が域内のどこにいても自分が加入しているコンテンツ配信サービスを利用できるようにするための法案を賛成多数で可決した。旅行や商用などで域内の他の国に短期滞在する際、自国にいる時と同じ条件で映画やテレビ、音楽、ゲーム、電子書籍などのデジタルコンテンツにアクセスできるようになる。閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。
「コンテンツサービスのポータビリティに関する規則(案)」は、デジタル単一市場の実現に向けて欧州委員会が2015年12月に提案したもので、ネットフリックスやアマゾン・プライムなどの動画配信サービスや、スウェーデンのスポッティファイをはじめとするデジタル音楽配信サービスなど、定額制のコンテンツ配信サービスを対象に、加入者が域内のどこにいても自国と同じ条件でサービスを利用できるようにするという内容。公共テレビや公共ラジオが提供している番組配信サービスなど、無料で提供されているサービスは規制対象外となる。
現在はある動画配信サービスの加入者が旅行先でサービスを利用しようとすると、「対象エリア外」といったメッセージが表示されてまったくコンテンツにアクセスできなかったり、その国の加入者向けに提供しているコンテンツしか視聴できないケースがある。これはコンテンツ提供者が特定の地域以外での配信を許可していない場合、ユーザーとサービス提供者の地理的関係によってオンラインコンテンツへのアクセスが制限される「ジオ・ブロッキング」によるもの。新規則の導入により、域内の他の国での一時的な滞在については地理的制限が禁止される。
一方、新ルールを悪用した著作権侵害を防ぐため、コンテンツ配信事業者は加入者のIPアドレスや支払い状況をチェックするといった「効果的かつ妥当な措置」を講じることができる。ただし、その際は必要かつ適切な個人情報保護手段を講じなければならない。