ボーイング補助金めぐりEUが一部勝訴、米は上訴の構え

米航空機大手ボーイングへの資金支援をめぐり、米国が世界貿易機関(WTO)の是正勧告に従わず、依然として違法な補助金を継続しているとEUが訴えていた問題で、WTO紛争処理小委員会(パネル)は9日、EU側の主張を一部認める判断を下した。ただ、協定違反と認定されたのはEUが主張していた29項目のうち1項目のみで、EU側の訴えはほぼ退けられた格好だ。

航空機補助金をめぐるEUと米国の通商紛争は13年前に遡る。EUは2004年、ボーイングに対する資金支援は不公正な補助金でWTOルールに違反するとして、米政府を提訴した。WTOは12年、EU側の主張を大筋で認め、米政府に是正勧告を行った。しかし、EUは米側がさまざまな形でその後もボーイングへの補助金を継続していると主張し、WTOにパネル設置を要求。これを受け、米政府が是正勧告に従って適切な改善策を講じているかについて確認作業が進められていた。

WTOパネルは今回、ボーイングの組み立て工場があるワシントン州が13~15年に実施した3億2,500万ドル相当の税優遇措置について、実質的な補助金にあたり、これによって欧州航空機大手エアバスが損害を受けたと認定した。そのうえで、これ以外にもボーイングに対する資金支援は継続されていたものの、それによってエアバスの利益が損なわれたとはいえないと指摘し、残る28の措置についてはEU側の主張を退けた。

欧州委員会のマルムストロム委員(通商担当)は声明で、「米国がWTOの是正勧告に従わず、ボーイングに対する違法な補助金を継続していたことが明らかになった」と強調。一方、米通商代表部(USTR)は「WTOルール違反と認定されたのは州レベルのプログラム1件のみだったが、米政府はこの判断に同意できない。上級委員会への申し立てを検討する」とコメントしている。

航空機補助金をめぐっては、04年にまず米国が、エアバスに対する支援策がWTOルールに違反するとして、EUを提訴した。WTOは11年、エアバスが新型航空機の開発資金として英国、フランス、ドイツ、スペイン政府から低利融資の形で不公正な補助金を受け取り、最大のライバルであるボーイングに深刻な打撃を与えたと認定。EUはWTOの裁定を受け、是正勧告に従って改善策を講じたとする報告書を提出しが、米側は対応が不十分としてEUを再提訴。今回と同様、適切に是正措置が取られたか確認するためのパネルが設置され、16年9月に米側の主張を大筋で認める判断が示されていた。

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